220.斜里岳(知床山域/1547M) | ||
積雪ラッセル・キックステップ・プチ沢登り、変化富む旧道往復に充実感 | ||
綺麗な日の出が 前日は中部日高のポンヤオロマップ岳で往復8時間弱の山行、疲れがないと言えば嘘になるが、KEIさんとの斜里岳も抗しがたい魅力的なプランである。連日の3時起きに、我ながら「本当に山が好きだねェ」と、半ば呆れつつ、KEIさんの待つ地元のスーパー駐車場に向かう。午前4時、国道242号線を清里町に向けて走り出す。ルートは、前回の摩周岳・西別岳山行時と同じ弟子屈経由である。また、阿寒横断道路を通るわけで、車酔いが心配だったが、丁度、綺麗な日の出に遭遇し、感激しているうちにそこを突破してしまった。野上峠を越えて、札弦の市街地手前で目指す斜里岳が姿を現す。複雑な地形の頂上部はガスに覆われているものの、ほぼ全容を目にすることが出来る。予想以上に白いのに驚いてしまう。降雪は大雪や日高だけではなかったようである。驚きと興奮に包まれながら案内標識に従い林道に分け入る。札弦の市街地から17キロ弱走ると、砂利道は突然アスファルト道路に変わり、その先に新装なった清岳荘が建っている。3時間少々のロングドライブの終点である。 立派すぎる小屋 旧清岳荘の位置から800メートルほど手前の尾根上北面に新清岳荘は建てられている。既にクローズされていて内部を見ることはできないが、立派すぎる外観は山小屋のイメージからは程遠い。麓の田園風景と弧を描くオホーツク海も一望でき、ロケーションもすこぶるいい。総工費1億円とからしいが、「少しかけすぎじゃないの」と思ったほどである。装備を整え7時30分に歩きだす。ハイキングコースを左に見ながら尾根を横切り、林道沿いの登山道を15分歩くと旧清岳荘跡地で、「こんなに狭かったの」という印象である。ここからが登山本番で、私自身は2002年以来4度目の清里コースである。一ノ沢川の大きな川音を聞きながら右岸沿いの登山道を行くと、直ぐに渡渉が始まる。予想以上に水量がある。これまで渡渉に苦労した記憶は全くなかったので、心配もしていなかったのだが、渡渉ポイントに少し気を使う。下山時ならともかく、最初から濡れたくはない。恐る恐るの渡渉だったKEIさんだが、ストックをダブルにすることでバランス良く通過できるようになった。 滝三昧に大感激 13回の渡渉を終えると下二股で、ここで一息入れる。朝日を浴びて輝きを増すダケカンバ斜面が美しい。見上げると、清流の奥に青空をバックにした頂上部が望まれ、登高意欲が湧くのを覚える。斜里岳初体験のKEIさんならそれも一入のようである。新道コースを右に分け、沢詰めの旧道コースに踏み入れる。ここから高度感が一気に増してくる。「水蓮の滝」「羽衣の滝」「方丈の滝」「見晴の滝」「七重の滝」「竜神の滝」「霊華の滝」と、滝が次々と現れる。水飛沫を上げる滑滝が白い帯のように流れ下る。自称「沢屋」にはそれほど珍しくもないが、KEIさんには驚きの連続で、歓声が上がり笑顔がこぼれるのも無理はない。Co1000を超えると日陰には雪が現れ、少し厄介な気分になる。鎖場やロープ場もあるが、KEIさんは苦もなく上がっていく。それでも、登山靴で濡れた岩盤や斜面を歩くのだから慎重さが求められることは言うまでもない。振り返ると、流れの向こうにオホーツクの大地が広がり、青い海と空で素晴らしい景観を形作っている。 今季初ラッセル 増水は明らかで雪解水に起因しているに違いない。涸沢を詰めると上二股という記憶があったが、上二股付近でも流れはしっかりある。下二股から雪に覆われた上二股まで2時間弱を要してしまう。私のプランでは、上二股・頂上間は90分近くかかると見ていたので、登頂は時間的にどうかなと不安がよぎる。KEIさんのプランでは50分だが、「それは不可能」と私。上二股からは、積雪20〜30センチほどもあり、登山道は雪で埋まる。前日のものだろうか、微かなトレースを拝借しつつも、ラッセルとキックステップを強いられる。嬉しいことに、KEIさんがラッセル交代を申し出てくれるが、女生徒に助けを求めるほど私は非力ではない(笑)。9合目「胸突八丁」まで上がると、周囲の展望は大きく広がる。雪化粧した大きな1508峰と鋭角的な南斜里岳、馬ノ背ピークにも吹きつけたように雪が付いている。正に、冬山そのものなのだ。下山ルートとして予定している新道コースも、登山道が筋のように白く浮かび上がる。予想外の降雪量に驚くばかりであった。 ホワイトアウト 阿寒の山々はもとより、5日にKEIさんと上がった摩周岳や摩周湖、屈斜路湖も遠望出来、感激を新たにする。馬ノ背ピーク直下南西面の大岩は直ぐにでも落ちそうに見えるが落ちない。この大岩、前からあったような気がするが定かではない。雪のせいか、それともKEIさんのタイムプランを意識したのか、意外と早く馬ノ背まで上がる。斜里岳頂上も指呼の距離となり、ここに荷をデポして空身でピークに向かうことにする。ここからトレースは全くない。この時、北側からガスが一気に押し寄せてきた。少しイヤな感じはしたが、雪や風はついていないし、ルート上にさしたる難所もないので上がっていく。ハイマツに張り付いたエビのしっぽが中々立派である。直下の祠にお参りをしてドーム丘を一登りすると待望のピークである。上二股から65分、ほぼKEIさん設定のタイムプラン通りで、先生の読みは大きく外れてしまう(汗)。大きな山頂標識には雪が張りつき「斜」の字しか読み取ることはできなかった。この時の視界は20メートルくらいで、ホワイトアウト寸前である。証拠写真を撮りそそくさと頂上を後にする。馬ノ背まで戻るが視界はせいぜい30メートルくらいで切れる様子もない。気圧計は下降傾向にある天気を反映している。 旧道コース下降 尾根上を辿る新道コースの売りは「眺望」と「竜神の池」。肝心の眺望が期待できないことや、雪が付いていることを併せて考慮。この時点で当初プランの変更も視野に入れる。周囲の冬景色もガスの中で、登高時に写真を撮っておいて良かったと思う。とりあえず、上二股まで降りるが状況に変化はないので、旧道コースを降りることを決断する。但し、新道コースに比べ、旧道コースの下降は難易度が上がり、経験者向きのそれとなる。スリングとロープを出し、いつでもKEIさんを確保できる態勢をとる。足の運び方やホールドの確保、身体のバランスのとり方などを説明しながら慎重に下降する。途中、鎖場で少しスリップし、ヒヤリとするが、その他は無難にクリアする。ロープを出したのも2〜3回ほどで、登山靴での「プチ沢下降」初体験を考えると、良くぞ頑張ったといえる。雨も降りだすが、Co1000付近まで降りるとそれも上がり、ガスも切れてくる。下二股まで降りてしまうと後は渡渉だけ。もう、多少濡れても平気なので、渡渉ポイント選びも適当である。最後に左岸から右岸に渡ると、ほどなく旧登山口で、無事に下山出来たことを共に喜び合う。KEIさんにとって、これほど変化に富んだコースを歩くのは初めてで、それだけに歩き通せた喜びは大きいようだ。 美味しいおでん 15時過ぎに新清岳荘に戻り、待望のランチタイムに突入する。水道横のあずまや風の調理台兼食卓テーブル(屋根付)を囲み、おでんと巻きずし、卵焼きなどを頂く。勿論、KEIさんが用意してくれたものばかり。オホーツクの田園風景を眺めながら、美味しいものを食し、充実した山行を振り返る。「こんな贅沢をしていいのだろうか」、そんな気持ちにさせられる瞬間である。とりわけ、温かいおでんの味は格別でした。 帰りしなに、高さのある床下に一張りのテントを発見する。声をかけたら中に人の気配がして、早々に退散する。翌日の斜里岳でも狙っているのだろうか‥。駐車場に車もなく、タクシーか何かで上がってきたのだろうが、少しだけ訝ってしまう。帰路、麓まで降りると再び斜里岳が姿を見せてくれる。KEIさんにとっては、新道コースが宿題として残ってしまったが、山が「またおいで」とでも言ってくれているかのようにも見える。 ★ 補足 ★ おお〜、ミステイク!。私の場合、失敗のない山行はないと言ってもいいのだが、今回の山行でも懲りずにやってしまった。「スパッツ」を付けなかったのである。山は確かに白かったが、登山靴が埋まるほどの積雪はないと判断したのだ。前日のポンヤオロマップ岳では必要としなかったこともあり、安易に判断してしまった。例え、積雪がなくても、渡渉や水際の登高や下降があるわけで、スパッツは必携である。渡渉を繰り返し、ラッセルやキックステップを余儀なくされる。結果は、ズボンの裾は濡れて登山靴の中まで湿気が及んでしまった。暖かく、何事もなかったからいいようなもので、「濡れ」は疲労やアクシデントに結びつく。いい加減な装備で山に入ってはいけないのである。 |
■山行年月 |
2009.10.13(火) |
■天気 |
晴後曇 |
■同行者 |
KEIさん |
■山行形態 |
夏道登山 |
■コース:往路/帰路 |
清里旧道C |
↑ |
★コースタイム | |
自宅午前3時50分出発 | |
地点分岐等 | 時間 |
新清岳荘 | 7:30 |
下二股 | 8:45 |
上二股 | 10:40 |
馬ノ背 | 11:25 |
斜里岳 | 11:45 |
所要時間 | 4:15 |
斜里岳 | 11:50 |
馬ノ背 | 12:05 |
上二股 | 12:30 |
下二股 | 14:20 |
新清岳荘 | 15:10 |
所要時間 | 3:20 |
自宅20時15分到着 |