249.武佐岳(道東山域/1005.7M) | ||
再訪の頂上に鎮座する巨岩は妻との初山行を鮮明に思い出させてくれた | ||
荘厳な日の出に 好天予報を信じての道東・知床遠征初日は武佐岳。前夜、中標津の開陽近くで車中泊し登山に備える。朝5時過ぎに登山口へ向かうが、武佐岳が大地からスックと現れカッコいい。丁度、日の出時と重なり、太平洋に昇る朝日が見事なまでに荘厳だった。そう言えば、このあたりは日の出絶景ポイントで、以前、泊りがけで写真を撮りに来たことを思い出す。標識に従いクテクンベツ川沿いの道路に入ると1.7キロほどで除雪終点である。除雪状況について事前調査をしてこなかったが、予定通りCo190Pまで入れて、幸先よいスタートとなる。雪は固く締まり、ツボやワカンなどでも良さそうだが、滑り期待でスキーにする。今回のルートは第一登山口からイロンネベツ川沿いの林道を詰め、ピークから南に派生する尾根を登るそれである。武佐岳標識に従い緩やかな尾根まで上がると視界が開け、左手に武佐岳が見えてくる。第一登山口をパス、ショートカットして林道に合流する。 地図読みも経験 スノモのトレースがあり、それに導かれるように起伏のない林道を行く。左に枝沢を見ると南尾根末端Co330Pで、登山口から1時間ほどで着く。この尾根、取付は細く意外と急である。階段登りで背に上がると薄暗い針葉樹が待ち受けていた。そこを抜けると暫くは緩やかな広葉樹の尾根が続く。傾斜が増し一登りするとCo517Pで、一旦下がり再び上がるとそこはポコのような地形で、Co856Pへの急斜面が全容を現す。が、またまた10メートル近い下りである。このあたりの地形、10メートル間隔の地形図からは読み取れないが、なんとなくそのイメージは想像出来る。これも経験の積重ねで得られるヨミだろう。樹木が密集し直接降りれないので、東側を横滑りで降りてから、回り込むようにコルに出る。白い斜面と針葉樹の緑色がコントラストを際立たせている。ここからは緩みのない急斜面が続いている。固い雪面を大きくジグを切るが、エッジトレースが僅かにつく程度でスキーは全く埋まらない。 苦戦細目シール シールがスキー板よりやや細いため、エッジ付近の抵抗はゼロである。ジグ角度や角付けによってはスキーがずり落ちたり、スリップしたりするので注意しながらの登高である。それでも、振り返れば、中標津を中心とする釧根台地や鈍く輝く太平洋が望めるようになり気が和む。急斜面を登りきると斜面の幅はグッと狭まり、植生は背の低いカンバ帯となる。緩斜面に上がると、Co856Pが眼前に迫り左右の展望も次第に開けてくる。右から尾根が合流するとCo856Pで、西に標津岳やサマッケヌプリ山、俣落岳が、東奥には羅臼岳をはじめとする知床連山が視界に入ってくる。そして、遠く国後の山々も洋上に浮んでいる。もう頂上までは指呼の距離である。雪の状態によってはスキーのデポや、アイゼンの出番も予想していたが、新雪が少し積もっていてスキー登高に全く支障はない。カンバ帯を抜けると、いよいよ頂上で見覚えのある巨岩が目に飛び込んでくる。 台形的な容尖峰 9時30分、快晴・無風の頂上に到着する。登山口から3時間35分、意外と時間を要した感じである。暫し、大眺望を楽しみカメラに収める。前述した眺望に、双耳峰の如き斜里岳、平坦な海別岳、知床の怪鳥遠音別岳なども加わる。どの山も充分に白い衣装を纏っている。コルを挟んで対峙する北峰から稜線を東に追っていくと尖峰に辿りつく。もう少し近ければ足を伸ばしてみたいが、距離に加え起伏もあるようだ。ここから見る尖峰はピラミダルではなく台形的な山容である。亡妻は麓の町、標津に生まれ武佐岳を見ながら育ったという。二人で夏道からこの頂に立ったのは登山を始めて4年目の2002年。ガスで眺望は得られなかったが、故郷の山の頂を踏みしめて考え深げだった様子を思い出す。巨岩の側で写真を撮ったことも懐かしい。山の話とは直接関係ないが、やはり、思い出というものは、他の何か、例えば行為や景観などと結びついて人々の心に残るものなのだと思う。 意気地無しの私 今回は文句のつけようがない天気で、もしかするとこの大眺望も妻が見せてくれているのかもしれない。いつになく感傷的な気持ちに浸りつつ20分を過ごす。さて、復路のルートをどうするか‥。夏道を降りて、途中(Co650P付近)から南側の尾根もしくは西側の尾根を降りるのも良さそうだ。特に、南尾根は林道の登り返しなどもなさそうで魅力的に映る。だが、基本的に意気地なしの私故に最終判断はほとんどの場合、無難な選択をしている。今回もセオリー通り往路を戻ることにする。Co856P付近までは細めのカンバ尾根なので、恐る恐るという感じの下降となるが、それから下は緩斜面の新雪滑降、Co750P付近からは固雪急斜面をエッジを利かせて滑り降りる。雪質が一様なのが安定した滑りにつながっている。ラクダの背のようなCo517P付近を東側斜面をトラバースするイメージでクリアし、あとは幅広い尾根を尾根取付まで一気に降りてしまう。 スノモトレース ここからの問題は、林道のスキーの滑り具合がどうかということである。なにせ、ほとんど平坦で復路といえども下りといえるかどうかなのである。が、心配は杞憂に終わる。雪温が思ったほど上がっていないようで、雪は全くベタつかない。更に、スノモで踏み固められたトレースはスキーの滑りを助けてくれるようである。第一登山口前の僅かな登り返しで汗をかいた程度で、予想外の楽勝である。第一登山口にはお洒落なトイレが建てられていて、登山道Co360Pの山小屋「武佐岳憩清荘」とともに、地元の人達のこの山に対する思い入れの強さを感じる。ただ、現在の登山口は、更に林道を1キロほど入った所にあり、利用頻度としては期待したほどでもないのかもしれない。ここまで降りれば、あとは平坦な尾根を横断するだけ。尾根等高線に沿うように回り込む林道を直線的にカットし除雪終点に帰りつく。 寒いけれど快適 下山後は、翌日の山行に備えて根北峠を経由して斜里まで移動する。道すがら、車窓から望む山々は違った表情を見せる。特に、斜里岳は圧倒的な存在感で、畏怖の念すら感じさせられる。南斜里岳とはいえ、頂上の一座に立つことを許してくれるのだろうか‥。そして、海別岳のたおやかさと白さである。この二座を見ていて、漠然と「山ってこんなんだったけ」と思わされる。私にとって、「山は遠きにありて眺めるもの」であり、あまりの近さに戸惑うばかりであった。恒例の下山後のお風呂は、斜里の、源泉100%かけ流し「グリーン温泉」で汗を流す。夕食とビールを買い込み、この日の宿泊場所「しゃり道の駅」に向かう。こじんまりとしてはいるが、綺麗でパソコンも使えて、快適な一夜を過ごすことになるが、市街地にあるためアイドリング禁止で、少しばかり寒い思いをさせられてしまった。まあ、その分、静かな夜を過ごせた訳で文句は言えないが‥。 |
■山行年月 |
2010.03.18(木) |
■天気 |
快晴 |
■同行者 |
単独 |
■山行形態 |
積雪期登山 |
■コース:往路/帰路 |
南尾根 |
↑ |
コースタイム | |
地点分岐等 | 時間 |
除雪終点Co190P | 5:55 |
南尾根取付 | 6:55 |
Co517P | 7:25 |
Co856P | 8:55 |
武佐岳 | 9:30 |
所要時間 | 3:35 |
武佐岳 | 9:50 |
Co517P | 10:20 |
除雪終点Co190P | 10:55 |
所要時間 | 1:05 |