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260.ニペソツ山(東大雪連峰/2012.7M)
今年は衝動的登山なれど御贔屓の山は変わらず凛としてそこに佇んでいた
林道には除雪が 東大雪のニペソツ山は私の御贔屓の山で毎年1回は必ず登りたい山である。ただ、沢シーズン到来ともなれば足を向ける余裕はないし、厳冬期は私の力量では歯が立たない。いきおい、残雪期から初夏にかけてか、新雪期前が登山適期となる。今年はどの山域も例年にない積雪量で、雪解けはかなり遅れている。ニペソツ山の登山口は杉沢出合。すでに標高が1000メートルを越えており、アプローチとなる林道の状態が気がかりだった。林道歩きがあまりに長い時はキャンセル。そんな選択肢も視野に入れつつ、国道から林道に分け入る。予想に反して、16ノ沢林道の状態はいい。雪もなく車はスイスイと進んで行き、苦もなく登山口まで入れてしまった。この林道は例外的に雪が少ないのかと言えば違うだろう。登山口の手前数百メートルには明確な除雪の跡があった。今現在、木材の搬出作業等も行われておらず、おそらく、登山者のために管理当局が除雪をしたのではないかと思われる。
登山道は雪の下 幸運に感謝しながら登山準備を行い6時前に登山口を出発する。雪融水で少し流されたのだろうか、かろうじて架かる丸木橋を渡り対岸へ。そこに「ニペソツ山」の標識を見るが、去年は無かったような‥。尾根末端には雪が残り、高度にして100メートルも上がらないうちに登山道は雪に覆われる。何日前のものだろうか、薄らとトレースが残っており、そこは雪が比較的固いのでそれを辿らせてもらう。Co1200付近で右手にクマゲラが立派な縦長の穴を作っていた。驚くやら感心するやら‥。が、このあたりからポツリポツリと雨が落ちてきた。天気予報も、大崩れはないが山間部での小雨と大気の不安定さを伝えていた。慌ててレインウエアを着込み、ザックカバーを付ける。降雨は許容範囲だが雷だけは避けたい、そんなことを願いながら登行を再開する。主たる植生がアカエゾマツからダケカンバに変わるとほどなく傾斜がなくなり地形図表記1484標高点である。
存在感ある前山 登山道も少し出始めたので歩いてみるが、雪の残るところは踏み抜くこと度々で消耗してしまう。北側の雪庇に逃げそこを直登する。雪は締まり快調なペースで小天狗大岩に迫る。樹林帯の奥には前天狗やウペペサンケ山が望めるようになる。背後のクマネシリ山魁、その麓には所々霧が漂う。青白く浮かび上がる景色はさながら山水画の世界である。汗だくになりながら小天狗大岩につく。いつもの通り、狭い岩棚を利して大岩を回り込む。前天狗が圧倒的な存在感を放っている。ニペソツの前山だが、立派な独立峰然としており、それに相応しい山名が与えられてもいいような気がする。ここから登山道は再び雪の下に隠れてしまう。天狗のコルから前天狗の中腹辺りまで残る雪、ルートをどうするか考えながらほぼ夏道沿いに歩きだす。重量感あるウペペサンケや左奥に霞む糠平湖を眺めながらの淡々と雪面に歩を刻む。天狗のコル付近は念のためコースサインを付ける。
前天北東面直上 カンバ帯を抜けると目の前にハイマツの中の登山道が現れ、そこから上に抜ける。この登山道に出会わなければハイマツ帯を迂回しなければならないところだった。夏道は、前天狗北面を斜上しその北西面に回り込むが、面倒なのでそのまま直上する。残雪たっぷりなので分からないが、左側(東)は崖状であり、右側ハイマツ側を意識して上がっていく。右奥の石狩連峰も視界に加わる。青空こそないが高曇りで雨も上がったので視界は良好だ。左側の傾斜が強まる辺りから、雪面を離れ右のハイマツ帯を一漕ぎするとスッキリとした岩稜帯で、そこはもう前天狗の北肩あたりだった。踏み跡もあり、少し行くとニペソツの槍が飛び込んでくる。いつも歩く夏道よりは30メートルほど高いので新鮮な眺望というべきだろう。左側から幌加温泉コースのシャクナゲ尾根が合流してくるが、尾根形状は東斜面に吸収され、かなりの急斜面となっている。前天狗の稜線上を辿りいつもの登山道に出る。
荷デポし頂上へ 幌加分岐からは表大雪や十勝連峰も望みながらの登行となるが、大きく下る場面もあるので復路を考えると気が重い。体力的に余裕が僅かなのもプレッシャーとなっている。そんなことを考えながら歩いていたせいだろうか。小石につまずき岩に肘を痛打してしまう。アウターは大丈夫だったが、その下の皮膚は立派な擦傷をつくっていた。コルからは雪田を上がるが、最後はちょっとした雪壁で、キックステップを踏んで天狗平に出る。天狗岳西面のトラバースに移る辺りから登山道にも所々雪が詰っている。登山道が深くえぐれブッシュ類が被っている所に多いようだ。そんな所は横に逃げたり、無理矢理中を行ったりして進む。ニペソツとの鞍部まで降りてしまうと、後は頂上まで小1時間の急登に耐えるだけだが、荷が何とも重く感じるようになる。初めてのことだが、荷をデポし頂上に向かう。持ったものは撃退スプレー、鈴、カメラ、パンと飴、コンデンスミルク、GPS、そして携帯。
迫力のニペ東壁 だが、歩き始めて間もなくGPSがないことに気づく。ザックから外したところまでは記憶があるがそれ以降はない。置いてきてしまったようだ。無くなる心配はないが、ケースから出しているので雨でも降ったら水漏れの心配がある。さりとて、わざわざ取に戻るのも面倒なのでそのままグイグイ上がっていく。と、登山道脇のハイマツにピンク色のワカンが片方引っかかっている。ほとんどモノトーンの中だけに鮮やかだ。いかにも寂しげで、下まで降ろしてやりたいが体力的に辛いので止めておく。岩肌剥き出しのニペソツ東壁が覆いかぶさるように迫ってくる。頂上に続くデコボコとした岩稜帯が恐竜の背のように見えてくる。岩場のトラバース付近に残る雪田が少しイヤラシイが慎重に通過し西側斜面に回り込む。いきなり西風の洗礼を受けるが、登頂のカウントダウンは残り僅か。それすら火照った身体に心地良い。登路が北向きに変わると1分で見慣れた頂上だった。
朽ちる山頂標識 前年は杭に付けられしっかり立っていた「ニペソツ山」の木製看板だが、三角点標柱に立てかけられていた。杭が朽ちてしまったのだろうか‥。崩れそうで崩れないのがこの日の天気らしく、山頂からの眺望はほぼ思いのままである。遠く阿寒の山も遠望できるが、特に心惹かれるのは、南稜から大平山、丸山、東丸山、ウペペと続く豊かな山魁と、大きな前天狗の奥に乗るように見えている北見富士である。勿論、幌加川源頭まで急激に落込む東面は何度見ても足が竦む。写真を撮り10分ほどの滞在で頂上を後にする。鞍部付近にデポした荷を回収し下山を続ける。とにかく、雷が怖いので出来るだけ早く樹林帯まで降りたい一心だった。辛い2か所の登り返しに耐えデポ地から1時間ほどで幌加分岐につく。ナキウサギの声を聞きながら行動食を流し込み再スタートを切る。前天狗の稜線上でニペの槍が消えてゆくのを確かめると、後は雪面を一気に下る。日射しも出てきてポカポカとしてきた。
樹林帯で試練が 誰もいない山中にただ一人、ちっぽけな存在だが大きな存在のような気もする。羆避けの鈴の音も下りでは一際大きく響き、瞬間的にその音に酔ってしまいそうになる。小天狗大岩まで戻ってしまうと一安心、ここで大休止と思ったが、惰性というのは恐ろしい(笑)。ノンストップで下山を続ける。Co1484Pからの下りはちょっとした試練が待ち受けていた。樹林帯といえども雪が緩んでいて、朝はなんでもなかった所でズボズボと踏み抜いてしまうのだ。それも、大腿部までなので足を抜くのも一苦労。高度を下げるにつれそれは顕著となるが、例年のグチャグチャドロドロとした登山道を降りるのよりはまだましかもしれない。右から16ノ沢川の沢音が、ほどなく左から杉沢のそれが聞こえてくる。尾根がギュッと細くなり急斜面を下りきると登山口で、今日もまた無事に下山出来たことを感謝する。飲まずにとっておいたビール(ノンアルコール)で一人祝杯をあげる。
★ザックデポ地点にGPSを置き忘れたため、頂上までのトラックデータはとれていない。
コースタイム
地点分岐等 時間
登山口 5:55
小天狗大岩 7:35
幌加分岐 8:55
Co1730デポ地 9:40
ニペソツ山 10:25
所要時間 4:30
ニペソツ山 10:35
Co1730デポ地 10:55
11:05
幌加分岐 12:00
12:10
登山口 13:35
所要時間 3:00
■山行年月
2010.06.02(水)
■天気
曇のち晴/一時雨
■同行者
単独
■山行形態
残雪期登山
■コース:往路/帰路
杉沢コース
取付の案内標識 クマゲラの巣
Co1484直下 辿りし雪庇
クマネシリ山魁 樹間から前天狗
糠平湖方面遠望 前天狗
コルから前天狗 前天からトムラ
前天から十勝連峰 分岐からニペ
天狗平からニペ 天狗からニペ
天狗岳 ニペソツ山東壁
岩場のTRV 北見富士遠望
ウペペサンケ山 西面から頂上
頂上から石狩 頂上風景
南稜と丸山 幌加川源頭
復路のTRV 前天から小天狗
入口の案内板 GPSトラック