267.広尾岳(南部日高/1231M) | ||
西広尾川北面直登沢は手強い滝を突破すればあとは源頭の易しい藪漕ぎ | ||
登山道が現れず シーズンインした沢登りだが不安定な天気が続きプランは何度もキャンセルに。曇や雨マークが並ぶ週間予報にポツリと晴マークが現れる。何の迷いもなく、嬉々として車を南日高へ走らせる。忠類道の駅で岳友Torimotoさんを拾い広尾町に向けて国道を南下。広尾の市街地から西広尾川沿いに12キロほど入った所が目指す広尾岳の登山口で(注)、ここは同時にピロロ岳へのそれでもある(09年6月遡行)。胸の高鳴りを覚えつつ沢装備を整え、早速西広尾川を渡渉する。元々平常水量の多い川、前日までの降雨で増水を心配したが、それは僅かで濁りもない。しかし、いきなり大腿部までの水深にはやや手を焼く。なんとか対岸に渡ったものの、笹藪だらけで登山道が現れない。暫くは登山道を歩き、適当な所から入渓というアバウトなプランだが、私が広尾岳に夏道尾根から登ったのが2004年11月。その時は全く明瞭な造材道が現れ、迷うことなくそこを辿った記憶があるが、今は全く違う。 崩落直後の雪渓 もとより、マイナーな山なので年間の登山者数も極僅か。道が荒廃した可能性もあるが‥。夏道登山専科なら少しパニクるところだが、そこは沢屋で、笹藪漕いで早めに左沢に入渓する。Co300過ぎの二股を右に入ると、右側に夏道尾根が迫ってきて10分ほどで夏道とクロスする。川には苔むした丸太が1本架かり、周囲の木々のいたるところに赤テープがぶら下げっている。尾根への取付斜面は急で、ここを上がった時は滑りまくったことを思い出す。暫くは河原林の鹿道を歩いたり、川中をジャブジャブ行く。河原が無くなってくると450屈曲点で、右から流入する細い支流の上部には水を噴き出す滝が見えていた。高さもあり、魅力的に映ったものである。少し上がると沢は右に屈曲し580二股に行きつく。ここも右に入るが、沢両岸が次第に狭まり、何か出てきそうな雰囲気になってくる。その沢カンはズバリ的中し、Co680で崩落後間もない雪渓の奥に扇状に広がるF1(7M)が現れる。 ゴボウで川床へ ここは慎重に雪渓を越えて左岸水際を上がり、上部の傾斜の緩トイ状滝は右岸を小さく巻く。谷はV字状となり、50メートルも高度を上げるとCS抱えた3メートルのF3である。直ぐ奥に右から簾状に落ちるF4(15M)が鎮座し中々壮観である。見惚れている暇はなく、先ずはF3の処理だが、水量が多く手掛かりも乏しいので直登は難しい。ショルダーならどうかと思うが、ずぶ濡れ必至でその選択肢はない。手前の傾斜のある右岸草付を巻くことにするが、15メートルほど上がったはいいが川床に降りられない。少し上の灌木に支点をとりゴボウで降りる。35メートルダブルでは川床に届かなかったが、安全圏まで下降することが出来て一安心。F4は左岸草付を巻き、落ち口に上がる。二つの滝の処理に要した時間は30分、難所を越え安堵とともに汗が噴き出る。下流方向奥には頂上部をガスで隠すピロロ岳が望めるが、私達が遡行した南東面直登沢など垂直のように見えてしまう。 左股から頂上へ 雨上がりのせいだろうか、とにかく湿度が高く、南日高にしては気温も高いようだ。汗を拭いながら、互いに沢の喜びに浸る。Torimotoさんは今季初沢なのでその思いも一入に違いない。小休止の後、遡行を再開する。滑滝を上がると沢は直線的に見通せるようになりスッキリとしてくる。3メートルほどの小滝をいくつか越えていくと最奥に2段の滝が見えてくる。Co800付近のその滝は、近づいてみると連続しているのではなく、手前に2メートルほどの小滝を従えたF5(8M)で、左岸を小さく巻く。Co870のF6(5M)はどん詰まりっぽいいがここは右岸を巻いて上がる。水流はグッと細くなり、核心部を通過したことを実感する。振り返ると一瞬ピロロが全容を現すが、頂上が意外とたおやかである。Co940二股はダイレクトにピークに向かう左股を選択する。沢はすっかり源頭の雰囲気で、水流も更に細々となり、Co1100あたりで消失してしまう。Torimotoさんはここで水を確保する。 黄色の山頂標識 次第に沢形は浅くなるが、ブッシュは全く優しい。左右は頂上近くから派生する尾根が目線の高さとなり、鹿道などもそこかしこに見られる。ハードな藪漕ぎならそこへ逃げ込む手もあるが、ほとんど無きに等しいのでその必要はない。但し、傾斜は半端ではなく、度々スリップする。ノンスリップ靴カバーでもと思うが、灌木の枝や笹を掴んで強引に身体を持ち上げる。徐々にあたりはガスに包まれるが、降雨以外なら許容の範囲内である。「いつ右の尾根に逃げるか」、そんなことを考えながら上がっていく。頂上周辺だけはハイマツ斜面なのでそれは避けたいところ。前方が少し混んできたので、ここぞとばかりに尾根に上がると直ぐに夏道で、そこから3分で頂上だった。ハイマツに囲まれた頂上にはそっけない黄色の山頂標識が置かれているだけで、日高らしい山頂風景である。生憎ガスが山々を覆い隠してしまうが、主稜線上の班計山(三等三角点)などは目にすることが出来る。 懸垂でタイオフ 楽古以南、何度見ても豊かな山魁というべきだろう。ランチタイムの後は夏道には目もくれず西面直登沢を下降する。膝程度のハイマツを30秒ほど漕ぐとそこはもうダケカンバの斜面となる。立ち込めるガスで少し幻想的な斜面だが、コンパスの指示に基づき降りていくと沢形に出会い、Co1100付近で水流を見る。Co900で左から枝沢が合流し、Co850付近で最初の滝(7M)に出くわす。両岸の濃い緑とのコントラストも鮮やかで綺麗な滝だった。Co830は右から沢が入り顕著な二股となり、その下は小滝が続く。沢は直線状となり、Co610の直登沢出合の対岸斜面も見通せるようになる。Co750下で5メートル前後の滝を巻き降りると、直登沢出合は直ぐそこに迫る。もう滝も出てこないだろうと、Torimotoさんの提案で懸垂下降の練習をする。川床から右岸を15メートルほど上がったところの太い木を支点に1本ずつこなす。今回、スッポ抜け防止のカラビナを使用したが、ロープ操作をスムーズに行わないとエイト環のところでタイオフしてしまった。やっぱり、訓練は必要だなあ〜と。 あり難きは獣道 下降を再開すると、7〜8メートルクラスの滝が2個現れる。この沢を遡行する場合、直登沢に入って直ぐに飛び込んでくる滝連発。遡行者は誰もが高まる期待感を抑えきれないことだろう。610二股からは最初川岸を降りるが、巨岩や流木が煩くペースが上がらない。適当な所から右岸の笹原に逃げ込むと、予想通り鹿道に出会う。右に大きく弧を描く西広尾川の広い河原林を効率的に淡々と降りていく。Co460三股(ピロロ岳直登沢出合)を過ぎ鹿道は徐々に薄くなっていく。背丈を越える笹との格闘することもしばしばである。川をそのまま下ればいいようなものだが、ついついショートカットルートを探してしまう。ピロロ岳沢行の際に利用した記憶があるのも災いして、Co350二股付近では踏み跡探しに躍起となるが、結局、徒労に終わってしまう。地形図にも林道(造材道)は明瞭でどのあたりにあるかは見当がつくが、そこまで強力な笹藪を漕ぐ体力・気力が残っていなかったのだ。 最後も笹藪漕ぎ この造材道を利用するためには、Co400付近から左岸を意識して進むことがポイントのようだ。素直に下降していくと、Co300で左から流入を見る。その左岸に踏み跡があり、そこから5分で登山口だった。最初と最後に笹藪漕ぎを強いられることとなったが、心は北面沢から西面沢を繋いだという達成感で満たされていた。両沢を比較した場合、難易度は明らかに北面沢が上で、「山谷」風グレードは★☆相当の印象である。この沢を遡行ルートに選んだのは正解だった。西面沢は易しいが、長い河原歩きは、例え鹿道を使えてもキツイものがある。どちらの沢も夏道(踏み跡)を使えるのが嬉しい。残すは中広尾川から東面直登沢だが、今年中に何とかしたいものだ。 (注)広尾岳の登山口に関して、2004年の山行記を見ると、今回の林道終点が登山口ではないことが判明した。林道終点の手前に林道分岐があり、ここを左に入ったどん詰まりが広尾岳の登山口だった。登山道は左沢の右岸に付けられていて、尾根取付地点で左沢を渡渉している。以前の山行記を読んでいれば今回のルートミスは防げた訳で、それは「登山口に間違いない」という思い込みが招来したものともいえる。今後の教訓としなければならない。 ☆Torimotoさんのブログはこちらです→http://blogs.yahoo.co.jp/esuke_t |
■山行年月 |
2010.07.11(日) |
■天気 |
晴後曇 |
■同行者 |
Torimotoさん |
■山行形態 |
沢登り |
■コース:往路/帰路 |
西広尾川北面直登沢 |
西広尾川西面直登沢 |
コースタイム | |
地点分岐等 | 時間 |
登山口 | 6:00 |
Co450屈曲点 | 6:50 |
F1 | 8:00 |
F3 | 8:40 |
Co940二股 | 9:15 |
広尾岳 | 10:35 |
所要時間 | 4:35 |
広尾岳 | 11:30 |
Co830二股 | 12:25 |
直登沢出合 | 13:15 |
Co460三股 | 13:50 |
登山口 | 14:50 |
所要時間 | 3:20 |