■山行年月 |
2010.09.19(日) |
■天気 |
曇時々小雨 |
■同行者 |
単独 |
■山行形態 |
沢登り |
■コース:往路/帰路 |
ポンショカンベツ川 |
夏道・暑寒荘コース |
コースタイム | |
地点分岐等 | 時間 |
暑寒荘 | 5:55 |
Co776二股 | 8:10 |
Co980二股 | 9:05 |
Co1210二股 | 10:00 |
稜線・夏道 | 11:05 |
暑寒別岳 | 11:10 |
所要時間 | 5:15 |
暑寒別岳 | 11:45 |
箸別コース分岐 | 12:00 |
滝見台 | 12:50 |
一合目 | 14:05 |
暑寒荘 | 14:25 |
所要時間 | 2:40 |
280.暑寒別岳(増毛山地/1491M) | ||
核心部の相次ぐ滝は手応え充分で限りなく「!!」に近い難易度と見た | ||
小雨ついて決行 増毛遠征2日目はポンショカンベツ川から暑寒別岳である。前夜は増毛市街の「暑寒公園」で車中泊するが、夜通し小雨が続き朝方ようやく上がる。増毛のピンポイント予報は「曇のち晴れ」。昼以降に晴間が広がるというもの。早朝、登山口となる暑寒荘に入るが、再び小雨模様になってきた。車の中で待機するがテンションは上がらない。逡巡するが、回復傾向にあるという天気予報を信じて決行することとする。どうせ濡れてしまうのだから意味はないがレインウエア(上)を着込み、ザックカバーをつける。隣の車の登山者も夏道を上がるべく準備を始めた。6時前小雨をついて出発する。川岸の遊歩道を歩いてCo310付近から入渓する。下流にCo300二股があることを目視とGPSで確認するのを忘れない。ここからCo776二股までは距離にして6キロ弱。長くて単調な川原歩きだが、この部分をどれだけ早くクリアできるかで全体の遡行時間が決まる。「山谷」では遡行時間を7〜8時間と見ており、せめて6時間台で上がるべく、最初からハイペースで飛ばす。 前半は何もなし 川幅6〜7メートルで水量も多く平坦だ。ゴーロ帯をリズミカルに歩を刻んでいく。いつも思うのだが、川原歩きはリズムが重要で、考えながら足を出していたのではスピードアップは図れない。足を出しながら考えるというか、自然に足が出ているというか‥。とにかく、少し大袈裟に言うとセンスが大事なのである。我ながら快調だなあと思っていた矢先だった。スリップして右膝を思い切り石に強打してしまう。慎重さを欠くとこんなものである。それにしても何にもない。所々に深緑の淵などが現れたりするがそれだけである。魚影は濃そうに見えたが‥。僅かにCo580P付近で茶色の岩床の滑床が目を引いた程度である。沢は次第に高度を上げ、小雨模様ながら西尾根が望めたりする。Co650付近を過ぎると川幅も狭くなり両岸もやや立ってくる。背後には白い雲に覆われた日本海を望むことが出来る。水面を打つ雨滴は相変わらずだが、これが好天なら快適な川原歩きとなるだろう。左右の斜面が一枚の岩肌のようになると、そこから糸のような流れが幾筋も落ちてくる。ほどなく、正面にCo776二股らしき中間尾根が見えてくる。長いプロローグの終わりである。 核心部は滝三昧 ここまで2時間15分は予定を上回るペースである。初沢は時間配分が難しく、後半に時間的余裕があればその分、核心部からの遡行は容易になる。一息入れていると、辺りにガスが立ち込めるようになる。ガスの中、核心部を通過するのは避けたいが、撤退する意思は毛頭なく、左股のV字谷に突入していく。同じ沢かと思うほど渓相が変わる。沢は細かく蛇行し岩床が剥き出しになる。滑を越えていくとCo810PでF1(8M)でここは右岸を上がる。Co850PのF2(10M)は右岸を高巻く。Co970P付近で左岸から滑床で流入するが、奥に高さのある滝が見えている。沢形の似合わぬ豊かな水量だ。直進すると3メートルほどの小滝でその上は傾斜のある滑床だが、周囲は高さのある壁に阻まれる。正面にF3(20M)がガスの中から現れ迫力満点である。左からは階段状の滝が流入する。とりあえず、この滝の左岸草付をバイルを使用して、本流右岸の灌木帯まで上がる。ここは傾斜もあるので慎重に行動する。滝落ち口付近の右岸斜面は絶壁で残置スリングもあった。 涸れた右股選択 一旦、沢床に降りることも考えたが、前方にF4(15M)が見えたのでそのまま右岸斜面をトラバースする。この辺りの踏跡は結構明瞭である。この長い高巻きに30分弱を要してようやくF4の落ち口に戻る。Co1060二股は両方とも滝で流入する。本流はF5(二段20M)で右股は30メートルほどある。ここは中間尾根を登り、本流左岸に戻る。相次ぐ滝にやや食傷気味だが、これで許してはくれない。直ぐにF6(10M)で、下段は右岸を上がり上段は左岸を巻く。Co1100PのF7(8M)は右岸を直登し、Co1130PのF8(5M)は左岸を小さく巻く。連続する階段状のF9(5M)は直登し、最後のF10(10M)を右から上がるとCo1210二股となる。ここでようやく核心部を抜けたことを実感する。この二股は左は水量豊かだが、右股は涸れている。コンパスからピークに近いのは右股だろうが、問題は藪の程度である。疲れてはいるが、ラスト300メートル弱、地形図からも濃い藪はないと判断し右股に入る。沢形は明瞭で足元の石は見えていてブッシュも薄い。 遂にストックが 徐々に笹や灌木が混じるが、それは優しい部類である。だが、気がつくと左手で持っていたはずのストックが消えているではないか。おそらく、100メートルも下がれば見つかるはずだが、体力・気力ともにその余裕はない。武利岳中ノ沢川で片方を失くし、暑寒でもう片方も失くしてしまった。沢形が斜面に吸収されると、灌木の薄い藪となる。コンパスの指示を守りながら登行する。やがて、その灌木の藪を抜け出すと周囲は膝下程度の雑草となる。折しも、ガスが次第に薄くなり気温も上昇してきたようである。黄色く色づく雑草が気を和ませてくれる。左上に稜線が望めるようになり、コース標識らしき構造物が視界に入ってくる。傾斜が緩みだし稜線が近いことを物語るが、最後に灌木とハイマツの藪が現れる。それが薄そうな所を選んで締めくくりの藪を漕ぐと、そこは全く穏やかな稜線上で、直ぐに夏道に出会う。右には大きなケルンが積まれている。そこからほとんど高度差のない夏道を5分弱行くと待望の山頂だった。 喧騒の暑寒山頂 一等三角点設置で点名は「暑寒岳」である。暑寒荘から5時間15分、我ながら誇らしげな遡行時間である。頂上は風もなくポカポカ陽気に包まれている。これでガスが切れてくれれば最高なのだが‥。少しすると、鈴音とともに2人の若い登山者が上がってきた。聞けば、暑寒荘を7時過ぎに出発したという。当り前とはいえ、沢よりはやはり早い。下降は夏道なのでのんびりすればいいようなものだが、ガスは切れる気配を見せず、何より続々と登山者が到着し、あっという間に喧騒に包まれてしまった。異様にテンションの高い登山者もいて何やら騒がしい。そそくさとランチをとり、12時前に下山の途につく。沢靴に靴カバーを履くが、箸別分岐過ぎの急斜面のロープ場は辛かった。足元が石なのでスパイクの当たりが足に堪える。恐る恐るの下降が続くが、登山道の広いことには驚いてしまった。造材道を登山道にしたような感じで、高速道路並みなのだ。扇風岩まで降りると、ガスが切れてポンショカンベツ川源頭の山並が明らかになる。 整備された夏道 辿りし方向を振り返ると、緑の山肌に直線的な登山道が筋のように浮かび上がる。ナナカマドの紅葉がアクセントのごとく華やかさを添える。この暑寒荘コースは北尾根の背を忠実に辿るルートだが、沢同様こちらもうんざりするほど長い。だからという訳でもないのだろうが、コースも標識類も良く整備されている。合目標識は勿論、眺望ポイントには「滝見台」「佐上台」「つつじケ丘」などといった名が与えられている。雰囲気のある白樺並木の中を歩くシーンもあり、思わずカメラのシャッターを押してしまう。なお、尾根上1075.9に三角点が設置されているが(点名:炭釜ノ上)、登山道からは少し離れているようで標識を見ることはなかった。最後に来ての御愛嬌のような登り返しには苦笑してしまうが、一合目が登山口の暑寒荘から高度にして200メートルも上がった所に設置されていた。このコースを登ることを考えると気が遠くなってしまう(笑)。赤い暑寒荘の屋根が見えてくると山行もエンディングを迎える。2日間のハードな沢行に耐えた我身体に感謝し沢装備を解く。 単独遡行に意義 さて、今回の増毛遠征を簡単に総括してみたい。群別川本流とポンショカンベツ川、地味な増毛山地にあっては、おそらく最もメジャーな沢だと思う。遡行者も相当数いるようで、沢のいたるところに遡行者の存在を嗅ぎとることが出来た。事前の情報収集をさほどしなくても、ルートファインディングに苦労をしなかったのはその現れであろう。両沢の共通点は、巨大な滝と断続する滑床、そして、優しい源頭だろうか。変化に富み、渓相も綺麗で中級者でも充分に楽しめる沢といえるだろう。それだけに、私自身、単独でこの沢を遡行出来た意義は大きく、満足すべき増毛遠征となった。なお、両沢の評価だが、長さと核心部の滝の多さからポンショカンがやや難しく、「!*」ではあるが「!!」に近いそれといえよう。同沢を下降する場合、微妙な巻きや懸垂下降の連続となるに違いない。一方、群別川は「!*」相当で異論はないが、例えば、下降に南峰・増田沢を使うとすれば、手強い藪漕ぎを強いられ、確かなルートどりが求められる。本流下降より消耗するというのが私の印象である。優しい下降ルートと考えるのは誤りであろう。 |