285.剣山(北部日高/1205.1M) | ||
大転倒しつつも信仰の山は久々に登山らしい登山をプレゼントしてくれた | ||
積雪期は未登頂 2011年の年明け山行は北日高の剣山である。この山、これまで3回ピークを踏んでいるが積雪期は意外なことに一度もない。2004年2月に夏尾根906コブの南から派生する尾根を辿り二の森まで上がるも時間切れで敗退している。私の中では「この山が残っていたか」という感じである。標高差800メートル程度で、足慣らし山行としては最適とも思えるが、雪の状態によっては苦戦も強いられることだろう。何より足元を選ぶ山とのイメージが強い。だが出発前に決められず、車にスキー、ワカン、スノーシューを積み込み、登山口で判断することにする。プランAはノントレースの場合で、スキー不適の山であることは確かだが、スキーのアドバンテージを生かし、906コブまではスキーで上がり、以降はワカンとする。プランBはトレースがあるケースで、この場合は最初からワカンで上がる。急斜面もあるのでスノーシューは不適と判断した。果たして現地まで行ってみると、スノーシューによると思われる明瞭なトレースがあるではないか。 有難きトレース 前日もしくは前々日のもと思われる。問題はこれが何処まで伸びているかだが、少なくとも906コブまでは刻まれているに違いない。そんな楽観的な読みでプランBをチョイスするが、トレースは一程度踏み固められているので、出発時はツボ足とする。剣山神社で安全登山を祈願した後、手洗川沿いに伸びるトレースを右に分け、夏道に沿って上がっていく。深さ30センチ×幅30センチの溝の中を快適に辿る。尾根地形が顕著となり、傾斜が緩むと地形図534標高点で、前方に二の森から三の森にかけての稜線が見えてくる。ここから一旦下がると平坦な疎林が広がる。モノトーンの世界に錆びた標識が浮かび上がる。ここを抜けるとCo906コブに向けての本格的な登りとなる。標高は560メートル付近である。ストックで積雪を測ってみると1メートルほどもある。道端の石像が隠れるはずである。傾斜も増してきてジグ登行となるが、確かなトレースのお陰で快調なペースを維持する。ノントレースならラッセルでさぞかしもがいたことだろう。 苦しい尾根歩き 平坦地付近までは並行していたスキーのトレースもいつの間にか消えている。何処へ向かったのだろうか‥。順調な登山もコースが南東から南に変わる辺りになると吹雪いてトレースが所々隠れるようになる。適当に中りをつけて進むが、膝付近まで潜ることもしばしばである。ワカンを履けばいいのだが、面倒なので無理矢理ツボ足で906コブまで上がる。小休止を入れるが、何よりポカポカとした日射しが有難い。トレースが先に伸びているか目で辿ってみると、雪に埋まってはいるが、微かな雪面の変化にその存在が見て取れる。幸運に感謝しながらワカンを装着しリスタートを切る。鞍部まで下がり、壁のような二の森への登りにかかるとようやくトレースに再会する。傾斜が強い分だけそれは崩れているが、あると無いでは大違いだ。蛙岩の下を回り込んで二の森へ。ここからは尾根歩きとは名ばかりで、西斜面のトラバースと急登を何度か繰り返すことになる。行く手を阻む不動岩を右から回避すると三の森の高みが視界に入ってくる。 ロープでビレイ 高度差40メートルほどの急登に耐え三の森に上がるが、トレースが崩れ雪中でもがくシーンもあり、何とも苦しい。まるでコピーしたようなシーンをもう一度経験すると、頂上手前のビューポイントにポンと飛び出す。目指す剣山の頂上岩塔がベールのような雪を纏って現れる。信仰の山に相応しい険しさと迫力を放っている。写真を数カット撮り先を急ぐ。左はスパッと切れ落ち、右も急斜面なので滑落しないように気を配りながら足を運ぶ。雪が詰る「母の胎内」を上から越えるとようやく梯子場に到着する。ワカンを脱いで梯子を上がるが、雪に埋まっている分、それは安定していて高度感も薄れる。三番目の梯子を上がると待望のピークである。狭くて傾きのあるそこにも雪が積り、驚くことに天を射す剣の近くまでトレースがあった。流石にフリーでは怖いので、ロープで自己確保したうえで移動し写真を撮る。背後の十勝平野が青白く大きく広がり、冬の厳しさを実感させる。ここから見ると芽室の嵐山スキー場も単なる丘陵地にしか見えない。 立派な山岳犬が 残念なことに日高や大雪の山々はガスに覆われ眺望を得ることはできない。僅かに、西隣の久山岳が見える程度である。一方、辿りし方向を見るにつけ、稜線上に巨岩が鎮座したり張り出したり、この山が岩山であることを思い知る。およそ20分の滞在の後、下山の途につく。僅か5分ほど素手で写真を撮っていたが、その間に少し濡れ気味の手袋は凍りついている。微風で体感的にはそれほどの寒さではないが、やはり冬の山である。「汗をかかず身体を濡らさない」「素手で行動しない」、冬山の基本を思い起こしていた。この日は私一人か‥、と思っていたら直下のビューポイントで犬連れの登山者に出会う。ビューポイントに立つ登山者と犬、中々絵になるなあと思っていたら、下から勝手についてきたのだという。首輪が付いていたので飼犬だろうが、厳冬期の剣山とは立派な山岳犬といえそうだ。登高時の苦しみを思い起こしながら急斜面を何度か下ると906コブ(一の森)で、ここでようやくショートランチを摂る。 大転倒は天罰か ラッセルして東端の展望台まで行ってみるが、二の森から派生する東尾根上に並ぶコブ(巨岩)が目を引く。13時過ぎに906コブを降り始めるが、Co800付近で登山者と行き違う。登頂狙いならやや苦しいというか、少し無茶するなあ〜というのが率直な印象である。余計なお世話と天罰が下ったのだろうか、直後に大転倒してしまう。ワカンの止バンドが金具から外れ雪に引っかかったのが原因だった。場所が場所なら大事になるところで、スキーといいワカンといいアバウトなメンテナンスはやはり通用しない。Co534Pからの下りで左大腿部が少し痛みだす。考えてみると、往復5時間以上の山行は久々で、ましてやそれが雪山とくれば消耗が大きいのも頷けるところだ。むしろ、よく耐えたと言った方が適切だろう。2011年のスタート山行に満足感を覚えつつ、14時前に剣山神社に戻りつく。帰り仕度をしていると前述の犬がもう下山してきた。この犬にとっては剣山など朝飯前、庭のようなものなのかもしれない。 |
■山行年月 |
2011.01.03(月) |
■天気 |
晴 |
■同行者 |
単独 |
■山行形態 |
積雪期登山 |
■コース:往路/帰路 |
神社コース |
↑ |
コースタイム | |
地点分岐等 | 時間 |
登山口 | 8:05 |
Co906コブ | 9:45 |
頂上 | 11:45 |
所要時間 | 3:40 |
頂上 | 12:05 |
Co906コブ | 12:55 |
登山口 | 13:55 |
所要時間 | 1:50 |