309.ルベシベ山(北日高/1740.1M) | ||
優しい直登沢も霜柱と薄氷と雪が遡行者の行く手阻む「でも初沢は楽しい」 | ||
メット被って茸 10月の声を聞くと沢シーズンもいよいよフィナーレを迎える。厄介な藪やブッシュはその勢力を落とし、雪渓処理に悩む必要もない。秋色に染まる沢をひたすら遡行していく‥。この時期の沢の雰囲気が一番のお気に入りである。にもかかわらず、第一週は11月下旬並みの寒波が流入し予定していた沢行もキャンセルを余儀なくされた。遅れを取り戻すような気持で北日高ルベシベ山に向かう。今季はゲートが解放されているパンケヌーシ林道を快調に飛ばし6時30分に五ノ沢林道に着く。早速、沢装備を整えるが、辺りは霜が降り寒い。たまたま通りがかった車の運転手に「茸採り」と間違えらる。メット被ってそれはないでしょうと、苦笑しつつ出発する。五ノ沢林道入口には真新しい鍵付チェーンがかけられていて車は進入できない。尤も、30メートルも行くと巨岩が林道上にバリケードを形成していてチェーンゲートの意味がない。水量豊かな五ノ沢の水音を聞きながら左岸沿いの林道を行く。手の込んだ法面や護岸工事にかつての隆盛を見る。 本流より直登沢 かなり荒廃しているが沢中を行くよりは圧倒的に早い。日射しを受けて五ノ沢右岸斜面の紅葉が意外に綺麗だ。ただ、霜のおりたブッシュ類が否応なしにズボンを濡らしていく。スタートして3キロ弱、Co1010P付近の土場を過ぎると林道は消滅する。ここからは薄らとした踏跡と沢を繋ぎながら進むが、いたるところにピンクテープがぶら下がっている。時に有難く、時に余計なお世話である。Co1070P付近で十字峡ならぬ十字沢を見ると、ほどなくCo1140Pの北面直登沢出合である。このまま本流を詰める手もあるが、滝もなく変化に乏しいとの情報があるので、ここは迷わず北面直登沢に分け入る。出合付近は倒木や岩石のデブリで埋まりゴチャついている。それもCo1210二股まで上るとスッキリとしてくる。左右の水量はほぼ同じ。右をとるが、左の滑も少し魅力的だ。沢は一気に核心に突入する。岩床が露わになり、奥に激しく水を落とすS字の滝(Co1230P)が見えてくる。側まで行ってみるとそれは5メートルほど。右岸の岩壁を慎重に上がる。 難敵は濡れ落葉 滝上にはトイ状の流れや小滝が続き俄然面白くなる。が、気を付けなければならないのは濡れ落葉だ。これがやたらと滑るのだ。加えて、落葉が小さな釜を隠してしまい、うっかり足を踏み入れようものなら膝上まで瞬時に水没してしまう。バランスを崩して危うく転倒なんていう場面も度々。Co1320Pで階段状の10メートルと出会う。一見直登出来そうに見えたが、良く観察すると傾斜があり難しそうだ。第一、この時期、全身シャワーはいただけない。左岸枝沢から中間尾根を乗越し沢身に戻る。直登沢に入って唯一ここにピンクテープが付けられていた。Co1340Pで2メートルの斜滝を越えると二股となる。水量は1対1でここは左に入る。北面沢だけに沢中にはまだ日が差し込まないが、背後には日射しを浴び輝く斜面とチロロ岳を望むことが出来る。写真を撮るが露出調整が難しい。登高を再開すると水際の石の感触がおかしい。良く見ると、氷が張り付き、斜面には霜柱も立っている。そして、白いものも‥。前週末はここも降雪があったようだ。 大眺望得て儀式 沢は2メートル前後の小滝はいくつか出てくるが、大物が登場する雰囲気はない。淡々と直登すると、Co1560Pで二股となり、ピークダイレクト狙いなので右股を選択する。左沢は中間尾根を挟んで並行している。沢形はグッと浅くなり、左右は薄い灌木に覆われる。雪が所々に残り、霜柱の立つ沢床はスリップすることしきりで消耗する。Co1620Pで源頭となり、そこから20メートルも上がると沢形は消えて灌木の藪に突入する。夏なら見通しは利かないだろうが、葉を落とした今は違う。勿論、灌木漕ぎも楽をさせてもらうことに。左右の稜線が次第に収斂し、灌木の向うに日射しを見るとピークは近い。直下に至ってハイマツの歓迎を受ける。左側のそれがやや薄い所を選んで上っていくと、北東尾根1730メートル地点に出る。2分のハイマツ漕ぎの後、無人のピークに立つ。ここには三等三角点(点名:留辺志辺)が設置されている。儀式のようにメットを被せる。快晴・微風の頂上は360度の大眺望に恵まれ、こんな日に山に上がれる幸せを痛感する。 枝折れてズルリ 初アングルの眺望はいつも感激モノだが、薄らと雪をいただいた1967峰の秀麗さが目を引く。墨絵のように重なる山々。北日高の広さと深さを感じる瞬間でもある。それにしても、表大雪と十勝連峰の白さはどうしたことだろう。中腹までほとんど完璧に白く、前週の寒波はかなりの降雪をもたらしたようだ。例年より早くスキーが出来るかもしれない。下りはCo1350右股ルートも考えたが、日和って遡行ルートを戻ることに。登高時、下降は難儀すると見ていたが、その予想通りとなった。普通ならサクサクと下れるところでも、スリップするので慎重に足を運ぶ。クライムダウンを多用し、バイルの出番も多い。それでも、小滝を巻いた時に掴んでいた木の枝が折れて1メートルほどずり落ちてしまう。直後には、脚をかけた木が折れてバランスを崩す始末。遡行時は終始日陰の沢だったが、Co1350二股まで降りると陽が差し込み、沢の印象まで変わってしまう。Co1300P前後の滝では懸垂下降でもと思ったが、面倒になってしまい、適当に巻いて降りる。 北面の沢は限界 直登沢出合まで降りてしまうと、ようやく緊張感から解放される。林道歩きも軽やかで、何度か走って下るが、自分の中で「調子に乗るなよ」との声がブレーキをかける。いつもラストに来てミスを犯すからだ。五ノ沢出合付近での羆の出没情報(7月)がゲート側に掲出してあったのを思い出し、多めに笛を吹きながら車まで戻る。北面沢の印象だが、滝の数は少なく難しさもさほどではない。源頭の藪漕ぎも薄い部類である。直登沢出合近くまで林道跡が利用できるのも嬉しい。何より、4時間前後で展望の良い1740メートル峰に沢から上がれるはウリだ。難易度としては「★1個」で、初心者でも僅かな緊張感で楽しめるだろう。 時間も早いので、ペンケヌーシ岳の登山口まで足を伸ばしてみる。入山帳を見ると、この日は2パーティが登っていた。近くの滝が中々の迫力だった。山は冬に向かって急速に衣替中である。いくら暖かくても、北に面した沢での沢登りはもう限界のようだ。標高の低い南向きの沢ということになれば、やはり南日高だろうか。後2本くらいは何とか‥、と思うがそれもどうなることやら。とりあえず、今季の沢納めを一応済ませたという達成感に包まれながら山を後にする。 |
■山行年月 |
2011.10.09(日) |
■天気 |
快晴 |
■同行者 |
単独 |
■山行形態 |
沢登り |
■コース:往路/帰路 |
パンケヌーシ川五ノ沢 |
↑ |
コースタイム | |
五ノ沢林道818P | 6:45 |
Co1140直登沢出合 | 8:00 |
Co1350二股 | 8:35 |
ルベシベ山 | 9:50 |
所要時間 | 3:05 |
ルベシベ山 | 10:10 |
Co1350二股 | 11:00 |
Co1140直登沢出合 | 11:35 |
五ノ沢林道818P | 12:25 |
所要時間 | 2:15 |