■山行年月 |
2013.05.18(土) |
■天気 |
晴 |
■同行者 |
単独 |
■山行形態 |
残雪期登山 |
■コース:往路/帰路 |
西肩北尾根 |
↑ |
コースタイム | |
林道終点 | 4:15 |
林道分岐 | 4:30 |
北尾根取付 | 5:25 |
Co1276P | 7:40 |
Co1683P | 9:50 |
稜線西肩 | 10:55 |
札内岳 | 11:10 |
所要時間 | 6:55 |
札内岳 | 11:20 |
Co1683P | 12:10 12:30 |
Co1276P | 13:35 |
北尾根取付 | 14:30 |
林道分岐 | 15:25 |
林道終点 | 15:40 |
所要時間 | 4:20 (20) |
362.札内岳(北日高/1895.6M) | ||
ガケノ沢左岸尾根から念願の高みへ御褒美は日高の美しさと険しさ独占 | ||
週末好天も仕事 5月中旬を過ぎてようやく太平洋高気圧が張り出し、北海道も春らしい好天が続くようになった。GW後半の欲求不満気味のニペソツ山行の帳尻を合わせるべく、18日〜19日で北日高のエサオマントッタベツ岳を予定していたが、今度は珍しいことに日曜に仕事が入ってしまった。止む無く、18日のみの日帰り山行を組む。行先は、北日高の札内岳。雪のある時期は日帰りは無理との先入観があったが、HYMLのもっちゃんが前年2度も日帰りをしている。ルートは札内岳西肩から派生する北尾根を辿るもので、戸蔦別林道の林道終点(6号砂防ダム)まで車が入れることが条件となる。今季は雪が多いのでどうかなと思ったが、ネットで林道の開通を確認し、勤務終了後、登山口に向かう。暗闇の林道を恐る恐る走り22時に到着。砂防ダムを落ちる水音を子守唄に車中泊する。翌日はヘッデンスタートを考えていたが、寝坊して4時過ぎにゲートを出発する。 意外なトレース 土埃の舞う戸蔦別林道からエサオマントッタベツ川沿いの林道(廃道同然だが)に分け入ると、直ぐに雪に覆われる。正面奥に札内岳が、次いでエサオマントッタベツ岳と北東カールが現れる。気持がいい歩きだが、雪融水で増水するエサオマントッタベツ川を足下に見ながらの右岸雪面トラバースには緊張させられる。ある意味、今回の山行で最も気を使ったシーンである。2個所目のそれをクリアするとガケノ沢出合で、ここからは、エサオマントッタベツ川との中間尾根にルートをとる。気懸りなのはガケノ沢にスノーブリッジが残っているかということだった。運よく、50メートルくらいガケノ沢を入った所に流れを覆うデブリの山があった。靴を濡らすことなく対岸に渡り尾根に取付く。先ずは、Co1276Pまで、標高差500メートルの登りである。急斜面をツボ足で上がってゆく。マイナーでハードなコース、登山者のトレースがあったのは意外だった。尾根が細く急なところは雪がついていないので、回り込んだり、灌木を頼りに無理矢理上がる。 果たして届くか 古いアウター上下なので強引に突破していく。鹿道はほとんど発達していないし、利すべき雪庇もない。傾斜が再びきつくなるCo1050P過ぎでスノーシューを履く。踏み抜くこともなくグリップ力もアップする。「もっと早く履けばよかった」と。右から尾根が合流するCo1276Pで一旦傾斜はなくなる。取付からここまで2時間少々は良いペースである。尾根は南東に転じ、その形状も細くなる。雪庇もしっかりとついているように見えるが、どれだけ有効活用できるかが山行のポイントである。大きな亀裂がありヤバそうなものは尾根側を迂回するが、ほとんどは雪庇を歩く。背後には妙敷山から1967峰までがずらりと並び壮観である。Co1400Pまで上がると目指す札内岳が北カールとともに姿を見せる。まだまだ遠く、果たして届くのか自信がない。一旦下がり、次いでダラダラとした登り。札内岳北カールは雪崩の巣窟のようだ。Co1550P付近からCo1683Pにかけての急登が始まる。喘ぎながら雪庇を越えるとCo1683Pで、広く平坦な雪庇上に倒れ込む。 ハイテンション 西奥には、幌尻岳や戸蔦別岳も眺望に加わる。辿りし尾根筋が白い筋となって浮かび上がる。消耗は激しいがここまで来たらピークへ行くしかない。ここに荷をデポし空身でアタックをかける。アイゼン・ピッケルスタイルに変更したが、直ぐに判断ミスだったと後悔することになる。雪が柔らかく、大腿部まで何度も踏み抜く。足が抜けないこともしばしばで泣きたくなる。雪庇も不安定なようで積極的には使えない。それでも、札内JPからの稜線に上がると疲れは吹っ飛んでしまう。西隣のエサオマントッタベツ岳と北東カールをはじめ、主稜線に連なる名だたる山々とカール群が一望のものとなる。カムエク、ピラミッド、1823峰、1839峰、ペテガリ‥。とにかく、北から南まで、日高全域が記憶にないぐらいの美しさと険しさを見せている。思わず、雪の主稜線を踏破する自分をイメージしていた。そして、目を東に転じると札内岳のピークが指呼の距離となるのだ。テンションが上がらない方がおかしいというものだろう。 満足感と疲労感 そこから15分ほど、御愛嬌の起伏に耐えると待望のピークである。6号砂防ダムから7時間はプランより30分ほど早い。ここに至ってようやく十勝幌尻岳が姿を現す。中々の存在感である。雪に覆われた札内岳山頂ではあるが、妻とオピリネップの沢を詰めて初登頂したことや、単独でガケノ沢から上がり山頂でテント泊したことなどの記憶が瞬時に蘇る。東カールは雪崩跡もなくスキー向き斜面のようだ。復路も4時間以上の苦闘が待ち受けているので長居はできない。10分ほどの滞在の後、下山を開始する。大きな満足感を覚えてはいるが、濃い疲労感も同様にある。デポしたザックが遥か遠くに見えるが、さっぱり近づかない。だが、焦らず慎重な下降を心がける。50分近くをかけてCo1683Pまで降り、ここで20分ほどのランチタイム。スポーツドリンクとコンデンスミルクが効いたか、蘇る力を感じる。大眺望を脳裏とカメラに焼き付け下降を再開する。雪の状態に変化はなく、アイゼンのままでも踏み抜くことはない。 右岸トラバース Co1276Pを経て尾根取付まで一気に降りてしまう。安堵感に包まれるところだが、恐怖のエサオマントッタベツ川右岸トラバースが待ち受けている。中途半端な腐り方なので、ピッケルで支点をとりながらしっかりとキックステップを切る。足下の濁流にのみ込まれたらタダでは済まない。難所を通過し戸蔦別林道に出た時は緊張の糸が切れたか、急に身体のあちこちが痛みだす。そして、靴擦れも‥。林道には今日のものと思われる登山靴の跡も見られる。久々に好天の土日だけに、神威岳北東尾根からエサオマン岳や戸蔦別岳を狙う登山者もいるに違いない。林道終点は何台もの車で賑っているだろうと思いきや、私の車だけ。好天の週末というだけでは登山者が増えないのは、やはり日高というべきか。「何と勿体ない」と呟きつつ山装備を解く。往復14キロ、標高差1300メートルに及ぶルートなので、タイムリミット(11時30分)を設定しての登山だったが、結果として、その必要はなかった。ニペソツの敗退があったので、登頂意欲がいつもより強かったようだ。それが、私自身を予想以上にパワフルにしたのかもしれない。 ★今回は、荷をCo1683Pにデポしたので下山ルートも往路を辿ったが、もう少し雪の状態が良くて消耗が少なければ、北東尾根からダイレクトに林道終点に降りるつもりでいた。Co1655Pへの登り返しなどアップダウンはあるが、林道歩きは一切ないので、ある意味効率的かもしれない。何より、未踏の周回ルートは魅力的である。次回は是非挑戦してみたい。(5/21付記) |