401.富良野岳(十勝連峰/1911.9M）
北尾根からの登頂ならずともベベルイ沢源頭斜面は最高のコンディション
可愛い橋かかる　日の出公園での車中泊、熟睡感ゼロのまま遠征2日目の朝を迎える。近くのコンビニで食料を買い込み、再び山へ向かうが、暗闇の中に稜線が浮かび上がり、前日以上の好天が期待できそうだ。白銀荘へ向かうＴ字路側の駐車ゾーンに車を止め、夜も明けきらぬ内にスタートを切る。勿論、ヘッデン行動である。明瞭なトレースに導かれ三峰山沢に降りる。流れが露出しているのは2筋で、最初のは石伝いに渡るが、次の流れには可愛い橋がかけられていた。難なく北尾根に取付くものの、暗さも手伝い直ぐにトレースを見失ってしまう。その内に出会うだろうと高を括って北尾根を回り込む。だが、中々、トレースに合流しない。ルート的には、ベベルイ沢を渡り、ジャイアント尾根に上ればいい訳で、トレースを探すことよりも、適当なスノーブリッジと取付きが容易な斜面を探しながらベベルイ沢右岸を上がる。すでに周囲は明るくなり、Co1020P付近でSBを利して対岸へ渡るが、優しそうに見えた斜面は意外と厳しく、結構時間がかかってしまった。アバウトな山勘　結局、尾根の背にギリギリ乗った辺り（Co1160P）で突然という感じでトレースを見る。帰宅後にGPSトラックデータを見てみると、トレースとのギャップは大きく、人間のというより、私の山勘のアバウトさにあきれてしまうほどだった。もっとも、極論を言えば、冬山にルート設定の「正解」などというものはなく、ガイド本などに掲載されているそれは、安全性や所要時間、体力、植生密度などの要素が考慮され設定されているにすぎない。何れにせよ、このコースは登行・下降とも、三峰山沢～ジャイアント尾根のルートどりに「妙」というのもがありそうだ。その意味では、今回は大きく外してしまったことになる。少し高度を上げると、左手樹間には「バーデンかみふらの」や三段山西尾根の深い森が望めるようになるが、いかにも寒々とした風景である。合流点から40分ほどで針葉樹は姿を消してカンバの疎林となる。雲間から稜線が　西尾根南面は崖状の三段山や安政火口、そして、十勝岳付近の稜線が雲間から僅かに姿を見せる。麓に抱かれるように十勝岳温泉街が位置している。御嶽大噴火を見るまでもなく、十勝岳とていつまた牙をむくかもしれない（2014年12月16日、噴火警戒レベルが「2」に引き上げられている）。これまで何度も噴火を繰り返し、周辺に多大な被害をもたらしている。人間は自然の脅威の前には無力だが、火山活動を積極的に利用するあたりは、懲りないというか、実にしたたかな一面も兼ね備えているものだ。カンバ帯も過ぎると正面には次第に傾斜を増すジャイアント尾根が姿を現す。左手はベベルイ沢源頭斜面を挟んで北尾根が対峙し、その派生点にはホコ岩が天を衝く。吹きさらしの尾根なので、トレースは途切れ途切れとなってくる。加えて、尾根の西側はほとんどクラストしているので、やや沢寄りにジグを切る。尾根上部にスキーデポも視野に入れながら登行するが、その必要はなく、尾根頭直下はやや沢寄りに逃げて平坦な尾根頭に上がる。リスクを顧みず　この辺り、雪庇が発達しやすい地形だけに、雪崩リスクは高そうだ。右後方の前富良野岳が一際白く輝くが、その北面はまるでカール地形のように湾曲している。条件が良ければ北尾根から登頂するつもりだったが、富良野岳北面はガスに覆われ姿を見せてはくれない。時折、薄らと日射しもあり、稜線が微かに見えたりもするが、前日の三段山のように強行する気にはなれない。左右が切れ落ちた傾斜のある尾根はアイゼン・ピッケル登行が基本。難易度が全く違う。北尾根ホコ岩まで行き、暫し天候の回復を待つ。少なくとも、視界が安定的に回復することが条件だが、その兆しは感じられない。早々に下山を決める。下降は往路を忠実に戻るのが最も安全なのだが、ベベルイ沢源頭斜面を目にするとその魅力に抗うことは不可能だ。気がつけば、リスクを顧みず斜面に繰り出していた。シュプールが幾筋も刻まれているが、彼等の気持良さそうな姿が目に浮かぶ。高度にして150メートルほど、雪煙を上げながら沢を下り、Co1450P付近でG尾根に戻る。最後に濃い植生　ここでようやくこの日初めての登山者を見る。時計は11時を回っているが、スキーを楽しむだけならこんなタイムプランで丁度いいだろう。数パーティを横目に見ながら樹林帯の間際まで一気に滑り降りる。後は、トレースに沿って淡々と高度を下げるだけ。勿論、Co1160Pからは私の往路トレースを辿ることなく、一般的とされているらしいトレースを選択する。シールをつけるような登り返しもなく、ルート的にはやはり妥当なのだろう。それでも、植生密度が濃くてスキー操作には苦労させられる。穏やかな三峰山沢の沢床に降り立った時には、安堵感とともに大きな疲労感を感じたものである。それでも、久々の正月遠征、充実感に満たされていたことは言うまでもない。惜しむらくは、富良野岳登頂がならなかったことで、私の中ではニペソツ同様、捲土重来が難しい山の一座になってしまった。スキー三昧で明けた2015年だが、今年の私のモットーを最後に付記しておこう。「限りある体力踏まえて吟味する　登る山沢（やまさわ）量より質」


B・かみふらの	カンバ帯①

カンバ帯②	三段山方向

北尾根	ベベルイ沢

西方向遠望	Ｇ尾根頭

十勝岳温泉街	輝く三段山南面

ベベルイ沢源頭	直下からホコ岩

白い前富良野	平坦な尾根頭

ガスる富良野	ホコ岩

穏やかな沢床	GPSトラック

コースタイム
Ｔ字路駐車場	6:10
ベベルイ沢	6:50
カンバ帯	8:35
ホコ岩	10:30
所要時間	4:20
ホコ岩	10:40
ベベルイ沢	11:25
Ｔ字路駐車場	11:55
所要時間	1:15




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