419.御茶々岳(夕張山地/1331M）
スタートからの6時間超のラッセルに耐え頂上に立つも10歳若ければと
単独の宿命受忍　久しぶりに全道的に晴マークが並ぶ週末。次々と山行プランが浮かぶが、結局は前週登った槙柏山の北隣の御茶々岳に決める。夕張山地北部は今次積雪期の課題でもあるので、妥当な判断というべきである。山部地区には前週から30センチほどの降雪はあったようで、いつもの林道入口も雪に埋もれている。時間があれば除雪するところだが、時間が押されていたので、無理矢理車を入れる。四駆のパワーは絶大である。午前6時前、トレースなき雪面に繰り出す。表面はサラサラだが、下層はグサグサしており、踏ん張りが効かないタイプだ。気が重いが、単独の宿命ゆえ受忍するしかない。救いは、松籟も御茶々も槙柏もスッキリと姿を見せていることで、中央に位置する御茶々岳の巨大な山塊が目を引く。東尾根を挟んで北東と南東に大斜面を持つ松籟山の迫力も中々である。左奥には屏風岩も遠望できる。今季3度目で初めて目にする景色である。時折、振り返ってみるが後続者の気配はない。今日の好天、誰も来ないということは考えられないが‥。多少無理しても　見慣れた沢風景の中を淡々と歩くこと105分、ようやく、登行斜面の取付に到着する。ラッセルによる時間増加率は30パーセント程度で、本格登行を前に不安が過る。コンパスを御茶々岳と槙柏山の鞍部にセットし、リスタートを切る。小さな沢や尾根が入り組み、単純な地形とは言い難いが、目視確認も可能なので、ルート選択に難しさはない。雪は次第に深くなりラッセルも過酷さを増す。悲鳴を上げたい気持ちを抑えながら、ひたすら漕ぐ。ただ、雪質は一様なのでトラクションは効く。暫くは右手の松籟山を見ながらの登行で、白い斜面と植生のある尾根が縦縞模様を形成している。高度を上げるにつれ、右手の主役は御茶々岳に変わる。長い東尾根の派生点には白く輝く御茶々の頂上が見えるが、まだまだ高く遠い。果たして届くのか‥。ピークを踏む自信めいたものは希薄だが、ここは継続することが肝要だ。何より、天気が安定しているので多少は無理をしてもよい。Co900付近を過ぎると傾斜は緩み、前方にコル地形が見えてくる。最短ルート選択　左上を見上げると槙柏山の頂上部が視界のものとなる。頂稜西端の岩塔が懐かしい。やや南側から回り込むように最低コルに上がり、そのまま御茶々岳の南尾根に乗る。いきなり夫婦岩が現れ、その大きさと鋭さに声をあげそうになる。但し、この角度からは「対」には見えない。この南尾根、御茶々岳への最短ルートと思い選択したが、結果的にはミスだった。意外と細く起伏があるのだ。途中で西側のカリカリ急斜面を巻いたり、スキーを脱いだりで、苦労させられる。ちなみに、当初予定ルートはコルから西側に抜け、稜線南側（Co1196コル北）から頂上台地に上がるものだった。遠回りにはなるが、安全面でのメリットは大きいだろう。Co1170付近まで上がると、尾根形状は斜面に吸収され、傾斜は一気に増す。疲れてもいたので、ザックをデポし頂上アタックをかける。白い急斜面が頂上台地まで伸びていて、見上げると眩しいくらいだが、雪崩がいやらしい。左手の樹林帯にジグを切る。右上には雪化粧した頂上が迫り指呼の距離となる。背後には大眺望　一方、背後には夫婦岩の向こうに、北尾根から芦別岳、雲峰山、屏風岩、半面山へと続く山塊が露わになる。そして、ピラミダルな中岳の登場である。また、台形状の槙柏山も眼下のものとなるが、富良野西岳、布部岳、夕張岳等々、夕張山地特有の山容なのかもしれない。もう少しで頂上台地というところだった。何となく、山中に人の声が響く。夫婦岩は言わずと知れたクライミングスポットなので、アタック中のクライマーがいるのかと思ったが、そうではなさそうだ。空耳かと思った直後に、南尾根上に2人の登山者が姿を現す。私のトレースを辿っているところだった。やはり来たかと思いつつ、最後のジグを切り頂上台地に上がる。北側から西側にかけての展望が大きく開け、テンションは否が応でも高まる。ラストは雪の花を咲かせる灌木を潜り抜け東側の頂上に上がる。スタートしてから6時間25分の苦闘が実った瞬間である。下山ルート変更　富良野盆地を挟んで十勝連峰が対峙する。稜線西端の前富良野岳や旭岳も遠望でき、富良野岳も中腹辺りまで姿を見せる。やや靄った感じは否めないが、山を楽しむには充分な天気である。この週末、土日とも好天なら1泊で富良野岳（原始が原R）のはずだったが、日曜は崩れる予報なのでそれはキャンセルとなった。日帰りなら、前富良野岳から旭岳へ回るプランもあったが、御茶々岳以上に苦労したに違いない。富良野西岳、布部岳、中天狗が独立峰の如く存在感を発揮し、極楽平は緩衝地帯のようにも見える。麓から見ると迫力物の松籟山も西側は優しい姿に変貌する。力があれば松籟山ピストンとなるのだろうが、そんな余力はない。そもそも、下山ルートは、御茶々岳北東面を滑降し、下部で往路に合流する、という当初プランすら放棄したのだから何をかいわんやである。全く穏やかな頂上に身を置くこと20分で下山の途に就く。 10歳若ければと　直下斜面は日当たりが良く少しベタつくので慎重に降りてゆく。ピークを目指す登山者と行き違いになる。トレースのお礼を言われるが、完璧なそれとは言い難く、何やら照れくさい。ザックを回収した後、尾根地形を離れ、左手の沢地形（南東面沢）にルートをとる。Co990Pで往路トレースに合流。あとは取付までの標高差500メートルを下降するのみ。期待通りの雪質にスキーは面白いように滑り、僅か20分で取付き着となる。東面なのでしばらくは快適な樹間滑走が楽しめそうだ。心配していた復路林道のスキーの滑りも杞憂に終わった。これひとえに、前述の登山者のおかげで確かなトレースが出来上がったことによるもので、彼らに感謝である。これで、槙柏山と御茶々岳のピークを踏み、松籟山は直下まで迫った。内容ある2勝1敗というべきだろう。中岳、中天狗、布部岳‥、夕張山地北部にはまだまだ魅力的な山が多い。北尾根からの芦別岳もしかりである。とにかく、もう10歳若ければと痛感する昨今である（笑）。


穏やかな日の出	松籟山

御茶々と槙柏	登行斜面

松籟山南面	御茶々岳①

富良野盆地	御茶々岳②

夫婦岩	直下の急斜面

槙柏山	樹間に芦別山塊

輝く頂上	西側から頂上

中岳	芦別山塊

頂上から北望	中天狗と極楽平

頂上台地	GPSトラック

コースタイム
除雪終点	5:55
取付	7:40
最低コル	10:50
御茶々岳	12:20
所要時間	6:25
御茶々岳	12:40
取付	13:20
除雪終点	14:10
所要時間	1:30




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