421.トヨニ岳北峰(南部日高/1529M）
久々の南日高は穏やかな春景色で南峰から北峰、東峰へと稜線散歩
タイムギャップ　トヨニ岳はこの時期何度も訪れており、本来、山行記の対象外だが、今回は東峰まで足を伸ばしたこともあり、レアケースとして記すことにした。南日高を訪れるのは2014年8月の楽古岳（メナシュンベツ沢遡行）以来で、トヨニ岳に限ってみると2013年3月以来である。久々ではあるものの、慣れ親しんだ風景にタイムギャップは感じない。前日は暴風雪に見舞われたであろう日高の山々だが、この日は穏やかに稜線を輝かせている。富良野岳以来の山行で、テンションの高まりを感じつつ天馬街道を野塚トンネルへ。トンネル周辺の雪は少な目で、ポン三の沢川も二条の流れを露出し、支流も出合付近は口が開いている。いつもの登行尾根は一面笹に覆われ、全く使い物にならないので、支流の沢を詰めることにする。先ずは渡渉だが、近くにスノーブリッジは見当たらない。浅瀬を石伝い渡り切る。登山靴の甲を僅かに濡らす程度で済んだのはラッキーだった。支流も数か所流れが出ており、完全に雪に埋まる辺りでスノーシューを履く。無理矢理1151へ　だが、クラストした雪面を歩くのは難行さながらで、足枷以外の何物でもない。傾斜が強くなってきたこともあり、すぐにツボ登行に切り替える。途中から登行尾根に取り付くつもりだったが、惰性登行で機会を逸してしまい、主稜線1151P直下に至る。登行尾根頭Co1110Pへのトラバースは雪庇が嫌らしいので断念し、そのまま1151Pに出る。無理矢理キックステップで乗り切ったが、強い傾斜と固い雪面だけに、アイゼン＆ピッケルで安全を期すべきだった。一気に春の稜線風景が広がる。どうやら、前日は降雪はなく強風だけのようだ。背後に端正な野塚岳、正面に屏風のようなトヨニ岳が鎮座し、全くいい絵である。所々、山肌が露出しやはり雪は少ない印象である。登行尾根頭にデポ旗を打ち快適な稜線散歩が始まる。踏み抜くことは皆無で、快調にペースを刻む。1251JP基部にスノーシューをデポし、ツボのまま登行を続行する。尾根は細くなり、傾斜も出てくるが、靴が適度に沈んでくれるのでアイゼン＆ピッケルの出番はない。北峰直前で痙攣　偽ピーク直下、Co1390付近のナイフリッジでは流石に慎重にならざるを得ない。アイゼン＆ピッケルで確実にグリップを確保する。左はソガベツ川左股沢、右はトヨニ川左股沢がそれぞれ突き上げる源頭域である。深く切れ落ち、ミスは許されないシーンである。慣れたとはいえ、視界がクリアな分、恐怖心も増すようだ。難所を突破し急登に耐えると偽ピークで、ここからはなだらかな傾斜が南峰ピークまで続く。だが、このあたりが雪庇が発達している部分なので、意識して稜線西側を歩く。東峰への吊尾根を右真横に見るとほどなく南峰頂上で、スタートして4時間10分での登頂だった。必要最低限をアタックザックに詰め込み、新たに加わった稜線北側の眺望に魅かれるように北峰へ向かう。右足元のトヨニカールはいつ見ても優しげで、スキーがあればと思う。最低コルを過ぎると、北峰ピークに向けてラクダの背のような瘤が連続する。青空に向かってすくっと立つ北峰はピラミダルで容が良いが、右脚が攣って何度も立ち止まる。山は在り続ける　屈伸とマッサージで乗り切るが、ストックがなければもっと病んだかもしれない。それでも、30分弱で北峰に到着する。主稜線はやや西方向に向きを変え北上し、東西に大きく羽を広げたようなピリカヌプリに行き着く。あくまでも白くそして雄大で、目を引き付けずにはおかない山である。トヨニ南峰BC一泊でその頂を踏んだのは2009年5月のことだった。まだ7年というべきか、もう7年もというべきか、とにかく、山は変わらずそこに在り続け、私は確実に年老いたわけである。ピリカヌプリの左奥には神威岳が顔を覗かせ、その更に左には春別山が望まれる。北方向奥には、勝ポロや札内岳が遠望でき、手前にはペテガリ東尾根とか早大尾根らしき支稜が横たわっている。尾根と谷が幾重にも重なり、人を寄せ付けない険しさを漂わせている。北峰から北東に帯びる支尾根も魅力的で、1438Pまで行ってみたい気もするが、脚の状態を考慮し自重する。穏やかな日差しが稜線を包む。風が少しだけ出てきたので、アウターを着込み北峰を後にする。落ちるなら左側　野塚岳から楽古岳へと続く主稜線南端も、山脈収れんとは無縁のボリュームを誇っている。手頃な縦走コースだが、足の確保を考えると難しい。南峰まで戻りその足で東峰へ向かう。この吊尾根は、初めて残雪期のトヨニ岳に登った時（2006年4月）に辿っているが、その時は、ganさんのトレースを追うので必死だった。「落ちるなら左側」というganさんの言葉しか記憶にない。直線距離にして500メートルほどで、東峰の標高は30メートルほど低い。見た目はシャープな尾根だが、実際に歩いてみると難しくはない。コルから東峰までの間がやや気を使う程度だ。この頃からアイゼンに雪がつきはじめ、時々ピッケルではらう。東峰ピークまで上がると、東峰北東尾根1253P付近を見下ろすことができる。うねる尾根と雪庇が目を引く。主稜線のナイフリッジをを嫌い、この北東尾根にルートをとる登山者もいるが、下部での渡渉もあり、私なら選択はしない。復路は主稜線に向かって歩くことになる。主稜線の起伏や雪庇の発達度合が良くわかる。尻滑りは楽しい　黒々とした岩肌を露出するトヨニ川左股源頭と平穏なトヨニカール。好対照な左右の景観を楽しみながら、11時10分南峰に戻る。6時間ほとんど休みなく歩き回っていたので、ここで小休止とする。20分のショートランチの後、下山を開始する。ナイフリッジ直下まで降りてホッとしていると、突然目の前に3人パーティが現れる。今日はトヨニ岳独占と思っていたので、正直、驚いてしまった。聞けば、トヨニ岳までというから、時間的には何の不思議もない。1251JPの基部からはスノーシューを履くが、雪がかなり腐っていたので非常に効果的だった。踏み抜きもなく、サクサク歩くことができる。1時間30分で下降ポイントに到着。私は沢に向かって一気に尻滑りをする。ストックで方向とスピードを調整しながらあっという間に沢床に降り立つ。ラストの渡渉は問題なかったが、そのあとがいけなかった。僅か20メートルほどの川原だが、連続して大腿部まで踏み抜いてしまう。靴の中までしっかり濡らしてしまい、ご愛敬にしては情けないフィナーレとなってしまった。 ★東峰から南峰に戻りGPSを見ると、「GPSオフ」の表示が出ている。出発時に電源を投入したが設定は変えていない。バッテリーに問題はなく、電波事情も安定していたはずである。どうしてGPS機能がオフになったのか理由がわからない。復路、南峰からのトラックデータに問題はなく、暫くは様子見とするが、不安感は払拭できない。替え時サインかもしれないが、私の年齢では投資が無駄になるかもしれない。


滑と登行沢	1151からトヨニ

露出する岩肌	ナイフリッジ①

ソガベツ源頭	ナイフリッジ②

南峰直下	偽ピーク

東峰	南峰から北望

瘤状の主稜線	トヨニ北峰直下

北峰から北望	北東尾根

ピリカと神威	南峰と東峰

東峰直下	北東尾根1253

トヨニ北峰東面	南峰東面

美しき東斜面	コルから南望

コースタイム
野塚トンネル	5:05
主稜線	6:50
トヨニ岳南峰	9:15
同北峰	9:55
同東峰	10:50
同南峰	11:10
所要時間	6:05
トヨニ岳南峰	11:30
主稜線下降P	13:00
野塚トンネル	13:30
所要時間	2:00




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