422.野塚岳(南部日高/1352.6M）
今季初沢で沢勘が満足すべきレベルにあったのが何より嬉しい
トンネル出ると　ここ数年、一年を通してコンスタントに山岳活動を維持するのが難しくなってきている。個々の山行について、例えば、山行時間や登攀テクニック、ルートファインディングなどに関してレベル低下を自覚することはないが、山に対する渇望感には波があるように思う。昨年などは沢シーズンを全休してしまったほどで、メンタル面で準備が整わなかったことが真相である。もしかすると、老化とはこういうことをさすのだろうかと思ったりする。山へ登る動機は様々あるのだろうが、本来、義務感や責任感で登るものではない。「登りたいときに山へ登る」でいいのではないか‥、最近ではそう割り切るようにしている。さて、沢シーズン到来である。今季の初沢は定番ともいえる南日高の野塚岳に決める。2012年7月以来だから、実に4年ぶりの再訪となる。峠への道路に入ると、天気は霧雨模様に変わる。テンションが上がらないままに野塚トンネルを抜けると、日高側は日差しが差し込み、青空が広がっているではないか。嬉しい誤算に顔がほころぶ。そういえば、浦河町付近のポイント予報を確認してこなかった。いきなり、チョンボだな～（笑）余裕ある足取り　駐車場で、今回、ご一緒するあさやんさんと合流し、沢装備に身を固める。ハーネスを付けメットを被るとグーンと気合が入る。コンクリート護岸を練習を兼ね懸垂下降する。あさやんさんにお付き合いしてATCで降りるが、やはり、エイト環のほうが扱いやすい印象だ。沢の匂いに懐かしさを覚えつつ遡行を開始する。co696付近までは川原歩きがメインだが、倒木が多く荒れた感じである。雪崩や強風、増水等のせいだろうが、憂うべきことにここ数年、それらは凄まじい破壊力を得ているようだ。あさやんさんは2度目の沢登りとのことだが、慣れた足取りで余裕すら感じる。co730二股はこの時期雪渓が残っていることが多いが、それは全くない。やはり、降雪量が少なかったようだ。ここからは川原は姿を消し、両岸は立ってくる。相次いで登場する小滝を巻いて上がるとco780三股で、ここには雪渓が残っていた。崩壊直後の印象で、残っているそれも強度はかなり低下しているようだ。安全を期して手前右岸から巻いて中股の滝の落口に出る。ガレ進むコル沢　右股（南コル沢）は下降ルートなので、出合付近の状況を注視する。処理困難な雪渓もないことに安堵しながらco930二股に向かう。小滝や滑滝が連続し、快適な遡行が続く。co780三股から30分で直登沢出合である。目指す沢は右だが、正面の野塚岳西コルに突き上げる沢は、二股付近までガレが迫り出してきた印象だ。聞けば、あさやんさんの沢デビューは、このガレた西コル沢を遡ったのだという。私は未遡行だが、初沢特有の魅力は感じない。小休止の後、右沢に突入する。ここからは一気の登りで、初歩的な登攀テクニックが必要となる。私自身、自らのルートファインディング能力を確かめながら先を行く。時を同じくして、それまでの好天が嘘のようにガスがかかり始める。体感温度も下がり、水流を避けたいところだが、安全性を考えると流心を行かざるを得ない場面もある。流石に水は冷たいが、水量がやや少ないのが救いだ。ただし、高度感は結構ある。右岸の灌木に残置スリングを発見する。この沢を下降する人もいるらしい。低下した難易度　co990やco1100の滝がポイントとみていたが、以前ほどの難しさも感じないままに通過してしまった。落石等で様子が変わったのかもしれない。直登沢の核心部に入ってもあさやんさんの動きはスムーズで行き詰るシーンはない。お助けひもを2度出したが、これは余計なお世話だったようだ。私と言えば、例によって、疲れからペースがダウン、小刻みに休みを入れる。co1170二股は地形図で見ると比較的明瞭なのだが、現場でコンパスをあてると微妙な感じとなる。水量もほぼ同じで、結局は右をとるが、正解は左だった。コンパスのセッテイングが甘いというべきだろう。ま、どちらにせよ、縦走路には出る訳で、藪も薄く途中からの修正もきくので大きな問題ではないが‥。源頭まで上がるとガスは濃くなり、右のオムシャヌプリも左の野塚岳西峰も見ることはできない。唯一、南方向がボンヤリと望めるだけである。ルートをやや左に修正しつつ高度を上げてゆくと、ピーク直下南の縦走路に出る。2分ほど歩くと三角点のある頂上だった。まったりランチ　そこは風なくポカポカとした暖かさに包まれていた。ウエアーはまだ濡れているが、アウターを着込む必要もない。こんな時は、まったりランチを決め込むに限る。ラーメンを食し、コーヒーまでいただく。少しだけ先輩ぶって、あさやんさんに周辺の沢ルートなどについて話をする。気が付けば、ガスが少し薄くなり、トヨニ南峰やオムシャ、十勝、楽古など、主稜線に連なる山々が姿を現す。東側（十勝側）の大雲海もなかなかいい。大休止の後、下山の途に就く。ルートは南コル沢を下がり、往路co780三股に出るというプランである。雪渓の状況によっては、野塚岳西峰から南面沢を下るサブプランも用意していたが、それは必要なさそうだ。30分近くかけて南コルまで下がる。この南コル沢、難しいところはないが、平均して傾斜が強いのでスリップ、転倒は避けなければならない。この日、何度もスリップしている私としては、自分自身への注意喚起のつもりであさやんさんにアドバイスする。薄い藪を降りてゆくと、co1070付近で水流を見る。チムニー下降も　眩しいほどの日差しを浴びながら狭い沢筋を降りてゆく。何度もクライムダウンを強いられるがロープを出す必要はない。ただ、co950付近の3メートルはちょっと厄介だ。残置ピンがあるので、強度を確かめ懸垂で降りる。ここはすんなりエイト環である。出合近くのトイ状は手足を突っ張ってのチムニー下降で突破する。最初の頃は、ニオベツ川左岸の尾根や、オムシャヌプリ東コル沢を下降したものだが、随分と、体力と時間を使ったものだ。その分、喜びも大きいのだが、単純に下降のみを目的とするなら、この南コル沢が一番だろう。co780三股からはクールダウンを兼ねての下降で、緊張感ゼロである。そんなせいもあるのだろうが、水中で思いっきり転倒してしまう。石に付着した強烈なぬめりに乗ってしまったためだ。痛いのと恥ずかしいのとで苦笑するしかなかった。何とも情けない。ラストは腕力確認とばかりに、残置ロープを利して体を持ち上げ、電気施設の横に出る。トンネル内から聞こえてくる爆音に迎えられ沢行を締めくくる。 ★今回は久々ということもあり、自分の状態を確かめる沢行でもあった。体力や技術が想定内の力量にあったのは喜ぶべきことだが、何より「沢勘」が衰えていなかったことが嬉しい。同行いただいたあさやんさんに感謝したい。


co730左股の滝	co770付近の滝

co780三股①	780中股滝

930直下滑滝	ガレ進むコル沢

co930右股	核心部の滝

辿りし沢筋	ガス迫る源頭

赤ヘルと三角点	東側は雲海

頂上から南望	野塚岳西峰

懸垂準備中	チムニー下降

co780三股②	co780三股③

co760付近	GPSトラック

コースタイム
野塚トンネル	7:15
Co930二股	9:00
野塚岳	10:55
所要時間	3:40
野塚岳	12:05
主稜線南コル	12:30
Co780三股	13:45
野塚トンネル	14:55
所要時間	2:50




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