427.富良野岳・三峰山(十勝連峰/1911.9M）
アバウトプランながら三峰山沢を右沢から左沢へ辿る結果OKの沢旅
想像を超える力　久々の十勝連峰遠征、初日は三峰山沢から富良野岳である。この時期、寒気流入があれば、降雪もあり沢登りどころではないのだが、幸運にも好天予報の週末で気温も低くはない。「バーデンかみふらの」付近に車を止めスタートを切るが、山は雲に覆われテンションは上がらない。山の天気はやはり別物なのだろうか‥。砂防ダム上流から三峰山沢左岸に伸びる林道跡を辿る。先の台風の影響と思われるが、林道跡は数箇所にわたって損壊している。それにも増して酷かったのは、Co1170二股手前の2基の砂防ダム左岸斜面の崩落である。土石流は山の容を変え、川岸近くまで迫り出している。そのエネルギーたるや想像を絶するものがある。自然の力、恐るべしである。足早にそこを抜けCo1170二股に出る。このルートはここからが本番、気を引き締め右股に入る。直ぐに、ぼんやりと九重ノ滝が視界に入ってくる。再訪でもタメ息　何やら、不気味な迫力を醸し出している。左岸は紅葉の斜面で右岸は切り立つ岩壁、それらを分かつベールのような流れ。目にするのは2度目だが、タメ息ものであることに変わりはない。標高差150メートルを30分近くかけて遡行する。おおむね右岸にルートをとるが、赤茶けた岩肌は滑らず、確実なグリップを与えてくれる。水に削られた滑らかな沢床に感心しながら最初の関門を突破する。傾斜が緩むとデブリが現れ、そこを乗り越えてゆくと、岩壁が行く手を阻み、右側から華雲ノ滝が落ちている。堂々たるそれで、2段30メートルはありそうだ。九重ノ滝は長く、華雲ノ滝は高いというイメージである。ここは左岸の藪から高巻く。この滝を直登した知り合いがいるが、とても、常人とは思えない。沢身に戻ると小滝も出てくるが難しいものはなく、ほどなく、Co1480二股となる。ガスは濃くなったり、薄くなったりを繰り返す。時折、日差しがでると身体も心も暖かさに包まれる。頂上方向の岩塔群も望めるようになったりする。誤差やや多しも　左股に入ると、流れも細くなり沢は次第にガレだしてくる。Co1560は判然としない二股で、ここは右に入る。Co1600付近では右岸岩棚から糸のような滝が落ち目を引く。沢には巨岩が鎮座するようになり、周囲は源頭の雰囲気である。Co1690の二股を右にとると、ほどなく水流は消失（Co1700）する。沢形は浅くなり、斜度も増す。初めての時（2010年8月）は高度感に恐怖を覚えたものだが、今回はさほど感じない。中腹の紅葉が鮮やかだ。見上げると、コブのような岩塔が待ち受けている。それを避けるように、やや、右に逃げながら高度を上げてゆく。そのせいか、北尾根の付け根を目指したが、北尾根Co1850付近に出る。誤差はやや大きかったが、許容の範囲内ということにしよう。ガスの向うに山頂標識が見える。刈り込みの入った踏み跡を辿ること10分で待望の頂上に到達する。夏道からの先客が数名いたが、意外と静かな山頂である。日差しはあるが吹き抜ける風は冷たく、証拠写真を撮って直下南斜面まで下がる。リスキープラン　だが、この風が雲を飛ばしたようで、天気は見る間に回復し大眺望が広がってくる。眼下右には原始が原や前富良野岳が望める。今年3月の積雪期ルートを目で追ってみる。我ながら良く度歩いたものだと思う。30分ほど休んだ後、山頂を後にする。夏道の下りなので気は楽だ。時間に余裕はあるが、明瞭なルートプランはない。とりあえず、上ホロ分岐まで降りると、縦走路を行くパーティが目に入ってくる。その派手なウエアに引かれるように、私の足も縦走路へと向かっていく。登山道は多くの登山者が行き交い賑わっている。風もおさまり、眺望は全くいい。こんな日に登山できる人は幸せだ。正面の盟主・十勝岳はあくまで端正だが、背後の富良野岳は重量感たっぷりだ。山の個性を感じながら三峰山を越えてゆく。東コルまで降り立った時、何となく登り返すのが面倒になってしまった。地形図を広げてルートプランを練る。結果、足元のルンゼ地形を降りることを決める。少しリスキーだが、何とかなるだろうというアバウトさである。痺れる懸垂下降　急斜面のザレ場を落石や転倒に注意しながら下降してゆく。夏道の登山者が奇異の目を向けている。すぐにルンゼに突入する。素早く、しかし、慎重に下降を続けるが、あと僅かというところで涸滝（5M）に出くわす。ここは左岸上のハイマツゾーンまで上り、一気に懸垂で降りる。40メートルロープでギリギリだった（汗）。痺れながらルンゼを抜け出すと、沢はガレに変わり、2メートルほどの涸滝も2個出てくるが、いずれもクライムダウンで処理する。Co1530でCo1170左沢本流に出るとようやく水流を見る。ここで小休止。周囲の山並みを眺めていると、まるで、スタジアムの中に身を置いているようで不思議な気分になる。この時、遡行者が現れて少し驚く。時間から考えて、上富良野岳まで上がり夏道下降だろうか。先行者の淡々とした歩みが印象に残る。下降再開後、5分ほどで夏道を見る。本当は夏道を降りるつもりだったが、偶然そこに登山者がいたのでそのまま左沢を降りることにする。理由にもならない理由ではある。今が旬の渓谷美　直ぐに、雌鹿ノ滝で左岸の藪を降りる。以前、下流から見た時はそれほど大きくは感じなかったが、中々どうして、高さ（20M）も大きさもある。雌鹿というよりは、巨鳥が翼を広げたような感じだ。その下流では、青と朱に染まった岩床に暫し足を止め、100メートルも続くスラブの沢床に目を奪われる。勿論、左岸斜面一帯のカラフルな紅葉からも目を離せない。個人的には紅葉時期の沢登りが一番だと思っている。そして、この大景観の一部として雄鹿ノ滝がある。前回は右岸藪を大きく巻いてかなり消耗した記憶がある。今回は、右岸の藪を懸垂する（2ピッチ）ことをイメージしながら、とりあえず、落ち口でじっくりと偵察する。結果、右岸を5メートルほど上がり、そこからミックス藪を繋いで降りることにする。少なくとも、中間付近までは問題ないようだ。そこからなら1回の懸垂で降りられるはずである。雄鹿よりコアラ　結局、藪はしっかり下までつながっており、懸垂することなく沢身に戻ることができた。それにしても、落ち口右岸にあった残置スリングはいつのものだろうか。すでに苔むしており、一見、それとは気づかないほど朽ちていた。40メートル近い大滝だが、水量は明らかに前回より少ない。今は渇水期なのだろう。ここは雄鹿というよりはコアラの顔つきだと思う（笑）。もう難儀する場面はないので緊張感はない。Co1240の幅のある滝（3M）の苔が美しい。安堵感に包まれながら荒れた沢をひたすら下る。Co1170二股から車まで30分でクリアし締めくくる。大雑把なプランニングだったが、結果オーライの沢行だった。遠征2日目は同級生とのアバレ川遡行である。どんな沢登りになるのか、想いを馳せながら白銀荘の湯に浸かる。温泉の後はアバレ川登山口を確認し、「青い池」で観光する。涸れた立木とのコントラストは美しいが、青さはオンネトー湖に軍配が上がるかもしれない。


九重ノ滝①	九重ノ滝②

九重ノ滝③	九重ノ滝④

九重ノ滝⑤	九重ノ滝⑥

九重ノ滝⑦	華雲ノ滝①

華雲ノ滝②	Co1450の滝

Co1500付近	Co1600糸滝

Co1750付近	山頂風景

北望	夏道から南斜面

上ホロと十勝岳	富良野岳

コルの下降点	ガレたルンゼ

雌鹿ノ滝	スラブの沢床

落ち口から紅葉	雄鹿ノ滝

コースタイム
Co1008.3P	6:40
Co1170二股	7:25
Co1560二股	9:10
富良野岳	10:25
所要時間	3:45
富良野岳	11:00
三峰山	12:00
左沢Co1530二股	12:50 13:00
Co1170二股	14:00
Co1008.3P	14:30
所要時間	3:30




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