431.屏風岳(北大雪/1792.7M）
半端でない達成感、屏風岳は数値以上に消耗する山を痛感する
前回の反省から　北大雪の屏風岳は前月、時間切れにより尾根半ば（Co1250P）で撤退した山だ。スタート直後の中間尾根大高巻とシールの剥離によるロスタイムの影響が大きく、今回はルートの見直しやシール調整を行うとともに、時間的余裕を確保すべく早朝ヘッデンスタートとする。登山口は大函パーキングから、国道39号「大学平」付近の駐車帯に変更。先ずは、国道を横断し対岸（北側）の尾根に取付く。尾根の背まで標高差50メートルほど。傾斜も緩やかで、25分で尾根を乗越しニセイチャロマップ側に降りる。砂防ダム上流から林道に上がり（大きく流失しているが‥）。今回は東側に回り込み、小さな沢形付近からダイレクトにCo878Pを目指す。一登りすると送電線の鉄塔が現れ、少々驚く。そこから、尾根伝いにコルに降りて、急斜面に取付く。カリカリ雪面なら手を焼いただろうが、グサグサだったので容易にジグを切ってCo878Pに上がる。ここまで90分は全く順調なペースだ。ここからは尾根の背を忠実に辿ればいいのだが、起伏もあり、ゴチャついた感じがしてイヤらしい。要するに単純な尾根地形ではないのだ。ルートを大外し　小休止の後、Co940Pのポコを西側からトラバースしてその先のコルに向かう。地形に関しては前回の記憶もあるのでアバウトに進む。7分ほど行った所でGPS位置確認を行うと、予定ルートから西側（麓側）に大きく外れている事が分る。私自身、これほど外したという実感はまるでなく、人間の、いや、私の感覚がいかにいい加減か証明されたようなものである。事故や迷いに直結するだけに、もっと慎重に行動すべきだった。ヘコみそうになる気持ちを抑えながら本来のルートに戻り、緩斜面を登ってゆく。判然としない尾根形状だけに、今度ばかりは小まめにコンパスを切る。周囲は徐々に漆黒の闇から解放され、Co1060付近で日の出時刻を迎える。尾根筋は次第にハッキリとなり傾斜も出てくるが、雪質が良いのとラッセルがほとんどないのは嬉しい。Co1200を超えると細尾根となり、南側には雪庇がが見られるようになる。尾根に似合わぬ大きなそれもある。強い北風に日々晒されているのだろうが、この日は穏やかだ。総じて、北側は樹木の混んだカリカリ斜面なので、南側斜面に黙々とジグを切るしかない。山岳景観が力に　だが、雪面は波打ち、雪質も一様ではないので、ペースは思いのほか上がらない。登りは何とかなるが、下りはどうなるか‥、そんな不安が去来する。前方右手に南尾根が見えてくるとCo1520JPは近い。傾斜はきつくなるが、尾根形状は陰り、広い魅力的なバーンが出現する。周囲の樹氷が何とも美しい。ゴツゴツした南尾根を眼下右に収めながらCo1520JPまで上がる。ここまで5時間30分、もう、充分に一山登った感じになっていた。コースタイムを考えるうえで、Co1520JPまでの所要時間がポイントとなる。9時前に到着したことで、登頂できる可能性がグーンと高まったことは間違いない。残念ながら、頂稜方向はガスの中だが、南尾根に加え、足元に突き上げるニセイチャロマップ第一川左沢が視界に入ってくる。勿論、辿りし尾根筋も明瞭になる。こういった景観が力となり、背中を押してくれるような気がする。自然の持つパワーというべきだろうか。Co1520JPからはツボ足の選択も視野にあったが、見た限り、スキーで上がれそうなのでそのままリスタートを切る。ここからは、東側に雪庇が張り出す。疲れ由来の願望　最初の内はスキー登行も余裕だったが、傾斜が出だすと、難行に変わる。雪庇は安定していそうだが、狭く、崩落の危険性も皆無ではない。主たるルートを西側にとるが、そこはカリカリでスキー操作が困難を極める。ボンヤリとした景色の中、必死の登行が続くも、Co1690に至り遂にギブアップ。スキーをデポしアイゼン登行に切り替える。心配した踏み抜きはほとんどないが、サクサク登れるという訳でもない。やはり、疲れていたのだと思う。左側から顕著な尾根が合流してくると頂稜西肩で、腰まで埋まる雪をかき分けそこに立つ。そこは小雪まじりの強い北西風がふき荒れている。傾斜はなくなったものの、稜線は細いので注意深く行動する。5分も行くと立派な容のピークが見えてくる。そこが偽ピーク、前峰であることは分かってはいるがGPSで確認してみる。疲れに由来する願望の現れであろうか‥（笑）。東側に高みなどなさそうに見えるが、降りてゆくと丸みを帯びたそれが見えてくる。近づくにつれ、見覚えのあるどっしりとした容がハッキリとする。スタートして7時間30分、ようやく待望のピークに到達する。新雪下に亀裂が　とにかく、視界はなく風も強いので証拠写真だけ撮って下山の途に就く。写真を撮る間だけアウターグローブを脱いでいたが、それはガチガチに凍っていた。麓は3月並みの天気だったが、稜線はまだまだ冬なのだ。また、ホワイトアウトの中、カメラなど構えていると方向感覚がマヒしてしまい、辿ってきた方向すら分からなくなってしまう。コンパスを当て進んでゆくと往路トレースに出合うといった状況だった。デポ旗を回収し15分ほどで西肩まで戻る。無風地帯まで降りてしまうと少しだけ緊張感から解放される。アイゼンを引っかけないようにスキーデポ地まで高度を落とす。安堵するも、完全に危険地帯を脱したとは言えなかった。気を付けていたつもりだが、スキーを履いたまま雪庇の亀裂に落ちてしまったのである。深さ1メートルほどだが、仰向けなので身動きが取れない。ザックを下しスキーを脱いで、ようやく這い上がることができた。もっと深さがあったら‥。背筋が凍るようなアクシデントではあった。新雪でそれが隠れていたことはあるが、単独だけに、高いレベルの注意力や警戒心は必須といえるだろう。頼もしきはGPS　Co1520JPまで降りてようやく人心地が付き、ランチを摂る余裕も出てくる。Co1520JPからの下降は、直下斜面を気分よく滑った後、波打った斜面を避けて雪庇下にルートをとる。僅かな傾斜でも面白いようにスキーが滑る。Co1103まで僅か25分で降り切ることができた。登り返しもある尾根上ならこうはいかない。前回は、シールのまま尾根を下った位なのだ。だが、調子に乗って造材道を滑ってゆくと、Co1060付近から南に派生する尾根に入り込んでしまう。Co1000付近で気が付き、Co980付近で往路に合流する。この日ほどGPSを頼もしく感じたことはない。Co940ポコの往路ルートミスを検証しつつ、Co878Pから尾根取付まで一気に降りる。日当たりのよい斜面はカリカリしていて怖いくらいだ。残雪期の穏やかさを醸し出す沢風景を突っ切ると、ラストの尾根乗越しで、ここは流石にシールを装着する。今回は気温が高かったせいもあるが、シール剥離の不安が全くなかった。調整が功を奏したということもあるのだと思う。尾根の背に立つと国道を走る車音も聞こえてくる。ゆっくりと滑り降り愛車に戻る。内容に拘る山行　今回は2度目ということもあり、万難を排しての挑戦だった。何とか登頂はできたものの、残雪期（2009年4月25日）とは比べようがないほど厳しい山行だった。獲得標高は1100メートルほどで、沿面距離は20キロを超える位と考えられる（GPSでは距離17キロ、沿面距離44キロと表示されるが‥）。数値的にはそれほどとは思えないが、尾根下部のやや複雑な地形や微妙なアップダウンなどが難易度を高めているのではないだろうか。仮に、深いラッセルが加われば、日帰りも不可能となる。それだけに、オプタテシケ山山行などとは異なる達成感に満たされたのも当然と言えよう。ペケレベツ岳に続き、再挑戦で登頂を達成し、途中敗退という悪い流れに歯止めをかけることができた。この傾向を大事にしながら、内容に拘った山行を追求していければと思う。 ★左の画像のうち、青文字は前回（2017年1月21日）の山行時のものである。今回より気温も低く雪は白い。まさに厳冬期だが、天気は今回よりはるかに良い。


Co1170付近	Co1300付近①

Co1300付近②	Co1360付近

Co1400付近	Co1420付近

南尾根①	頂稜方向

南尾根②	東側の沢源頭

Co1620付近	西肩から頂稜

稜線から西肩	偽ピーク

山頂写真	ニセチャロ川

乗越す尾根	南西尾根遠望

大学平駐車帯	GPSトラック

ニセチャロ川	Co950付近

Co990付近	Co1070付近

コースタイム
R39大学平P	3:25
尾根取付	4:05
Co878P	4:55
Co1103P	6:50
Co1520JP	8:55
頂稜西肩	10:30
屏風岳	10:55
所要時間	7:30
屏風岳	11:00
Co1520JP	12:10
Co1103JP	12:35
尾根取付	13:35
R39大学平P	14:20
所要時間	3:20




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