コースタイム(1日目) | |
12時30分自宅出発 | |
地点分岐等 | 時間 |
七ノ沢出合 | 14:35 |
八ノ沢出合 | 16:00 |
所要時間 | 1:25 |
八ノ沢出合テント泊 |
37.カムイエクウチカウシ山(中部日高/1979M) | ||
沢とカールの奥に鎮座する主稜線の盟主は私達に至福の一時をくれた | ||
日高山脈第二の高峰にて国境稜線の盟主カムイエクウチカウシ山。私たちにとっては山岳写真やガイドで目にしたり、遠くから眺めるだけの山だったが、遂に、その頂に立つことができた。 チロロ曲沢、エサオマン北東カールと順調に沢登訓練を消化した私達は、不安と期待を抱きながら二泊三日の日程で晴天の七の沢から入渓した。札内川本流の水位は膝くらいでまったく穏やかな流れだ。適当なところで徒渉し上流を目指す。仲ノ沢出合を過ぎ顕著な尾根の張り出しを回りこむと八の沢出合で、土曜日ということもあってか十数張りのテントで賑わいを見せていた。テント設営後、早めの夕食を摂り焚き火を楽しんだ後、シュラフカバーに潜り込む。沢音を子守唄代わりに心地よい眠りにつける筈だったのだが、私も静子も朝までうとうと状態。多少興奮気味だったのかも‥。何組かは5時前に出発しており、流石に皆さん早立ちだ。私達も身支度整え遡行を開始する。八の沢はエサオマントッタベツ沢に比べると水量も少なく、流れも穏やかな感じだ。30分も歩くと正面に目指すカムエクとカールが視界に飛び込んでくる。どっしりとした山容で、いかにも稜線の盟主たる威厳を放っている。近い感じはするが高度差は随分とありそうだ。右岸から落ち込む滝を過ぎると大雪渓群が現われる。水滴がたれ今にも崩れ落ちそうだ。時間をかけずに速攻で通過する。やがて1000メートル三股に到着。三本の沢が滝状となって落ちこんでおり、真ん中の沢の左岸にある巻き道に取り付く。ここは滑落事故が最も多いところ(7月に死亡事故発生)。慎重の上にも慎重を期して歩を進める。途中、右からの空沢を超え本流に戻るのだが、この間はガレた急斜面や草付きのトラバース、岩登りなど、体力だけでなく技術も求められる場面だ。この難所を必死の思いでクリヤーすると水流が細くなり、いよいよカムエクが迫ってくる。ほどなく傾斜が落ち、飛び出すような感じでカールにでる。エサオマン北東カールに比べるとこじんまりとした印象を受ける。熊がいないか周囲を見渡す。小さな雪渓、テント数張りと登山者二人、全く穏やか過ぎる風景だ。福岡大レリーフのある岩の前で渓流シューズから登山靴に履き替える。レリーフを見るにつけ、登山そのものが羆達の生活領域の中にあること、それ故に充分な羆対策、冷静沈着な対応が求められていることを痛感する。心で合掌しピラミッドとのコルを目指す。少し古いが羆の糞や掘り返し跡が何箇所も登山道付近で見られ、流石に羆の存在を強くする。ガレ場の直登を過ぎ、ようやく稜線に出る。ここからはピラミッド峰を背に胸までもあろうかというハイマツを漕ぎ、足を踏み外すと奈落の底といった感じの痩せ尾根を辿る。この辺りややバテ気味で体に力が入らない。行動食をあまり摂っていなかったせいかとも思ったりする。おまけに膝痛という爆弾も抱えている。「無事に降りられるだろうか」といった不安を抱きつつも、コイボク、八の沢の両カールを見ながらの稜線登りは気分がいい。気合を入れなおし高度を稼ぐ。右手の斜面の小規模な花畑をすぎ、一登りすると待望の頂上である。頂上は意外と広く、先客は八の沢で隣のテントのご夫婦だけ。カール底から湧き出すように雲が上がってきているが、心配するほど厚くはなく、素晴らしい眺望を得ることが出来る。北部日高から中部日高までが一望の下になるのだが、とりわけ私的には、端正な1967峰、雄大な幌尻岳とカール、恐竜の背のようなカムエク南西稜、南に目を転じると、ドームのごとき1839峰とペテガリ岳が印象的である。また、幾重にも重なる険しい山並みは日高ならではのものだと思う。はるか西方の羊蹄山や夕張岳までもが見えたのには感激ものだった。僅か二度の挑戦でこれだけ素晴らしい景観を目にすることが出来、思わず「ありがとう」とつぶやきたくなった位である。憧れの山の頂で至福の一時を過ごした後、往路を辿り下山の途につく。もっと個性的な山名をつけてあげたくなるピラミッドとの鞍部までの間に頂上を目指す登山者と行き違う。ほとんどが私達より早立ちした人達ばかり。中には帰路が心配になる中年のご夫婦の姿も。カールでシューズを履き替えデポ品を回収し、難所の下りにかかる。事故は疲れの出る下りがほとんどとのこと。1000メートル三股までは全く気が抜けない。そんな私達だったが、エサオマンで出会った人(ジャンプの船木に似ている)と再開したときは思わず顔がほころんだものである。声を掛け合い情報交換する。うれしいもので、静子などはこれで随分とリラックスできたと言う。問題の三股を過ぎると後は楽勝コースで、雪渓で火照った体を冷やした後は、沢歩きを楽しむ感じで八の沢まで下りる。 予定ではもう一泊し下山する予定だったが、体力的にも時間的にも余力があったので、テントを撤収し七の沢まで下りてしまうことにする。ガイドでは「数回の徒渉ですむ」ということだったが、なるほど、登り時には分からなかったが随分と巻き道があることに気づく。これなら徒渉回数も減るというものだ。しかし、そんなサインは適当に無視し、徒渉を楽しむように川の中をジャブジャブと歩く。20キロほどの荷も全く気にならず、さながらクールダウンといったところか。 思えば、前年のコイカク山行から始まったカムエク挑戦、「2年越しの想いが成就した」訳で、満足感に満たされた事は言うまでもない。素直に、頑張った自分達を褒めてあげたいと思う。 |
■山行年月/天気 |
2001. 8.11(土)/晴 8.12(日)/晴 |
■同行者 |
静子 |
■山行形態 |
沢登 |
■コース(往路/帰路) |
札内川八ノ沢 |
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コースタイム(2日目) | |
地点分岐等 | 時間 |
八ノ沢出合 | 5:15 |
1000M三股 | 6:50 |
八ノ沢カール | 8:20 |
頂上 | 9:55 |
所要時間 | 4:40 |
頂上 | 10:35 |
八ノ沢カール | 11:20 |
1000M三股 | 12:45 |
八ノ沢出合 | 14:35 |
七ノ沢出合 | 16:50 |
所要時間 | 6:15 |
総所要時間 | 12:20 |
19時00分自宅到着 |